3月のマイナス金利解除が無いといえる理由

それでは、これまで説明した日銀の金融政策の動向に関する金融市場の見方は、果たしてどこまで妥当性があるのか、改めて検討していこう。

まず、3月の金融政策決定会合でのマイナス金利解除は、ほぼ無いと考えられる。春闘の結果は出ているが、中小企業の賃上げ状況はまだはっきりしない時期だ。しかも、年度末も控えている。金融市場のボラティリティ(変動幅)を高める可能性があることを、日銀が率先してやるとは考えにくい。株式や為替相場が乱高下すると、事業会社の決算にも影響を与えることになる。

また、住宅ローンの変動金利の見直しは半年に1回、4月1日と10月1日に行われるので、3月にマイナス金利解除をして短プラが上がってしまったら、すぐに影響が出てしまう。建前に近いが、短プラは各金融機関が独自に決めるので、個別の金融機関で引き上げられるリスクはわずかに残る。

日本銀行本店
日本銀行本店(写真=PD-self/Wikimedia Commons

4月にマイナス金利解除をしないと日銀はタイミングを失う

おそらく、マイナス金利解除は、4月の金融政策決定会合で行われるだろう。年度末要因がなくなり、中小企業の賃金動向も見えてくる。そして重要なポイントは、4月を逃すと、解除のタイミングを失う可能性が高まることだ。

実は、消費者物価の前年比上昇率はピークを超えている。直近に発表された1月分のデータは前年比2.0%と、3カ月連続で伸び率は縮小した。先行指標といえる東京都区部の消費者物価の前年比は、すでに2%を割り込んでいる。

この伸び率縮小の傾向は、当面続く見通しで、今年後半には1%台で推移するとみられており、2025年には1%を割り込む可能性もある。となると、インフレターゲットである2%が遠退き、マイナス金利解除の最大の根拠がなくなってしまうのだ。

日銀としては、消費者物価が2%台のうちにマイナス金利解除をしておきたい、というのが本音だろう。

解除後の翌日物金利の誘導水準は、前述のように0~0.1%に落ち着きそうだ。となれば、短期金利への影響は限定的。短プラが引き上げられる可能性はゼロではないが、かなり低い。誘導水準が0.1%の期間も、0~0.1%だった期間も短プラは現在と同じ1.475%だったからだ。よって、マイナス金利解除では変動金利は上がらない、といえよう。