もし追加利上げが実施されたら…

さらに、マイナス金利解除後に追加利上げがある、という観測も浮上している。海外の金利先物マーケットでは、翌日物金利が0.1%を超える水準での年内の取引が散見されるようになった。この観測は、おもに海外の機関投資家中心に広がりつつあるが、国内の機関投資家で追加利上げの可能性に言及するケースも増えている。

もし、追加利上げが実施され、その引き上げ幅が0.25%となれば、翌日物金利は0.25%にまで上昇する。その場合、後述するように、住宅ローンの変動金利も引き上げられる可能性は非常に高い。

住宅ローンの金利を固定と変動どちらにするか
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

「変動金利」は「短プラ」に連動する

これまで、翌日物金利を中心に据えて日銀の金融政策の動向を探ってきたが、その理由は、翌日物金利の水準が変動金利に直接的な影響を与えるからだ。以下、そのメカニズムについて説明をしよう。

まず、多くの金融機関では、住宅ローンの変動金利は「短期プライムレート」(以下「短プラ」)に連動するように設計されている。住宅ローン金利のベースとなる「基準金利」は、短プラに、各金融機関が独自に決めた金利を上乗せしたものになっているからだ。短プラが引き上げられれば、基準金利は確実に引き上げられる。

したがって、すでに変動金利で借入をしている場合、基準金利の上昇分は、そのまま実際のローン金利である「適用金利」に反映されることになる。また、新規に借り入れる場合は、金融機関がローン審査によって個別に適用する「金利優遇幅」が変わらなければ、やはり適用金利は引き上げられることになる。

短プラを決めるのは翌日物金利

では、どういう状況になったら短プラは引き上げられるのか。短プラは、1年未満の短期金利の市場実勢に基づいて各金融機関が独自で決める、ということになっており、明確なルールは存在しない。分かりやすくいうと、短期金利が全般的に0.5%程度上昇したら、短プラも0.5%程度引き上げられる、というイメージだ。

但し、短期金利というものはそれほど大きな変動はしない。翌日物金利を基準として、短期金融市場は形成されるからである。その翌日物金利の誘導水準は、日銀の金融政策でしか変わらないので、そんなにコロコロと変化しないのだ。実際、現行の短プラレート1.475%は、2009年からまったく変わっていない。

つまり、短プラが変わるのは翌日物金利の誘導水準が変わるときであり、その場合、変動金利の基準金利も変わることになる。