旧約聖書に「10分の1税(タイス)」というものがあり、西欧では「年間の所得の10分の1を慈善活動に回せ」というのが一つの緩やかな(しかし、必ずしも守られるとは限らない)基準となっている。それに加え、消防署、警察、地方公共団体、卒業した大学、病院などから絶えず寄付の依頼があるのが普通だ。税額の一部が控除されることもあり、年の終わりには寄付が集中する。ちなみに、わたくしが能登半島地震の被害に対してささやかな寄付を決意したのは、米国に住むという周囲の環境にもよるが、NHKの国際放送で能登の地面が激動する画面を目撃したからであった。

1997年のアジア金融危機のころ、私はインドネシアを訪ねたことがあるが、現地の駐在員から次のような話を聞いた。「イスラム教のインドネシアの人たちは強い助け合いの心を持っている。役場にはいつもツボが置いてあり、そこに豊かな人が米をいつも寄進している。必要な人はいつもツボから米を手に入れることができるのだ」

同様のことが、イスラム地域全体についても言える。片倉もとこ(元国際日本文化研究センター所長)さんが、人に幸せをもたらすことで自分の心の平安を得られることを、『ゆとろぎ イスラームのゆたかな時間』(岩波書店、2008年)に美しい文章でつづっている。「弱い立場にあるものを保護するのが義務」という「草の根の弱者救済」の精神がイスラム教にあり、この考え方は多くのイスラム教徒に広まっているというのである。

「人助けをしない国」のイメージを払拭する方法

寄付文化を日本で今よりも盛んにするためには、今後、息の長い様々な努力が必要である。米国のように税額の一部が控除されるなど、税制にも工夫が必要だ。

寄付活動がより盛んになり、日本が往々にして紹介される「人助けをしない国」のイメージを払拭することを祈りたい。

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