文化庁が出した指針

こうしたなか、令和4年1月7日に「公用文作成の考え方(建議)」が建議され、この括弧と句点の問題が取りあげられ、まとめられています。

ちなみに、この「公用文作成の考え方(建議)」は、約70年前に示された「公用文作成の要領」が時代に合っていないことから新たに示された、公用文の書き表し方の原則をまとめたものです。この文書において、括弧と句点についてまとめられている箇所のなかで、この問題と関係がある部分を引用してみます。

オ 文末にある括弧と句点の関係を使い分ける。文末に括弧がある場合、それが部分的な注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であれば、最後の文と括弧の間に句点を打つ。

「公用文作成の考え方(建議)」(p.4)

使いわけのポイントは括弧内の文が「部分的な注釈」か「二つ以上の文、又は、文章全体の注釈」かというところです。「公用文作成の考え方(建議)」には、解説(「(付)「公用文作成の考え方(文化審議会建議)」解説」)があり、そのなかに実例が載っていますので、以下に引用します。

文末に括弧がある場合、それが部分的な注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。

例)当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している(日程は未定である。)。

さらに、二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であれば、最後の文と括弧の間に句点を打つ。

例)当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している。(別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した。)

「(付)「公用文作成の考え方(文化審議会建議)」解説」(p.17)

括弧内の句点を省略する場合

「二つ以上の文」はともかく、「注釈」が「部分的」か「文章全体」かというのは、場合によって解釈が異なるので、句点のつけ方の基準としては一義的ではないように思えます。そのためか、「解説」には、以下のように注釈があります。

なお、一般の社会生活においては、括弧内の句点を省略することが多い。解説・広報等では、そこで文が終わっていることがはっきりしている場合に限って、括弧内の句点を省略することがある。

例)年内にも再開を予定しています(日程は未定です)。

「(付)「公用文作成の考え方(文化審議会建議)」解説」(p.17)

ですので、基本的には9.のようにすればいいことになります。実は、そのほかにも括弧と句点の組み合わせについての問題があるのですが、ここでは割愛します(気になる方は以下にまとめてありますので、ご覧ください)。

岩崎拓也(2022)「第10回 公用文における句読点」『句読法、テンマルルール わかりやすさのきほん』(2023年12月13日確認)
文化庁「公用文作成の考え方(建議)」(2023年12月13日確認)

使いすぎにはご注意

国立国語研究所・編『日本語の大疑問2』(幻冬舎新書)
国立国語研究所・編『日本語の大疑問2』(幻冬舎新書)

括弧は目立たせたり、逆に目立たせなかったりするために使いわけるとよいでしょう。隅付括弧【 】は目立たせるための括弧、丸括弧( )は目立たせないための括弧です。括弧を使うことで、会話文、引用、注釈、強調などであることを読み手に伝えることができます。

なお、括弧の使用上の注意点は、使いすぎると効果が薄くなることです。何を伝えたいのかがわからなくなるので、使いすぎには気をつけたほうがよいでしょう。

今回紹介した以外にもさまざまな括弧がさまざまなところで使用されています。街中などで括弧がどのように使われているか観察してみると、おもしろい傾向がみられるかもしれません。

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