千葉県東金市の農村部のバス停留所。本数は1日わずか5~6本で、利用者はほとんどいない
千葉県東金市の農村部のバス停留所。本数は1日わずか5~6本で、利用者はほとんどいない(筆者撮影)

全国各地に存在する郊外型ニュータウンや、そのさらに外側にある農村部の間に忘れられたように残されている小規模住宅分譲地などで、所有者が亡くなり空き家になる、売れ残り空き地のままになっている土地が近年増加傾向にある。そうした分譲地は「限界ニュータウン」や「限界分譲地」と称され、相続する人にとっては「負動産」になりかねない。千葉県北東部に散在する旧分譲地の探索ブログやYouTubeチャンネルを運営している吉川祐介氏は、昭和の時代に投機目的で開発されたそれらの土地にまつわる諸問題を解説する。同氏の新著『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、再編集し、限界分譲地の交通や教育事情と生活インフラの面でのリスクについて紹介する。

限界ニュータウンの交通、教育事情

千葉県北東部、主に成田空港周辺や九十九里平野の限界分譲地の生活インフラにおいて、特に衰退が顕著なのは交通機関と教育施設である。鉄道の減便、バス路線の縮小や廃止、そして児童・生徒減少に伴う小中学校の統合・廃止である。

これは近年、日本の地方部全体に共通してみられる現象であり、特に限界ニュータウン固有の問題というわけではないのだが、一般の郊外住宅地同様、「ベッドタウン」としての用途に特化して利用されてきた限界分譲地において、この交通と教育のインフラから切り離されるのは、本来、子育て世代の新築需要に応えるべく開発された住宅用地としては致命的なマイナスポイントになる。