群馬県の豆腐メーカー「相模屋食料」は、この「失われた20年」で売上高23億円から400億円に急成長している。しかも、営業にも、工場にも、「前年比」や「利益率」などの、数値目標がない。同社の謎めいた成長の軌跡をまとめた『妻の実家のとうふ店を400億円企業にした元営業マンの話』(日経BP)の発売に合わせて、鳥越淳司社長の特別インタビューをお届けする――。(第2回/全3回)
鳥越社長
写真=大槻純一

「売れる自信」があるから数値目標は設けない

――相模屋食料(以下相模屋)では、営業部門であっても数値目標を設けていないとのことですが、それは事実ですか?

【鳥越淳司相模屋社長(以下鳥越)】はい、まったくないですね。本が出てからよくご質問をいただくのですが、何で皆さん、そんなにここに食いつくんだろうなと(笑)。

――なぜ、数値目標を設けないのでしょうか。

【鳥越】すごく嫌われそうな言い方なんですけど、数値目標がなくても売れる自信があるからですね。

まず、我々は売れる商品を開発できる。それこそ数字に追われて切羽詰まってやっているわけじゃないものですから、アイデアはどんどん出てきますし、今の商品をもっとブラッシュアップして売っていく余地もある。そして、うちの営業マンたちは、それを売ってくれる実力を持っていると信じている。事実そうなので。そうなると、数値目標って特にいらないじゃないかと。数字の目標って、難しいハードルを越えさせるために設けるものだと思いますので。

――頑張らないと届かないところに置いて、ストレッチさせるために。

【鳥越】はい。放っておくとやらない、できないだろうから、目標を置いて頑張らせる。でも、うちはそのハードルを設けなくても、売れるだけ売る力を持っている。という、ちょっと自己満足的な気持ちがありまして、特に数値目標を置かずにやってきました。