AIはわれわれの世界をどのように変えるのか。嘉悦大学教授で経済学者の髙橋洋一さんは「AIは人間がつくったプログラムにすぎず、世界を乗っ取るかどうかも人間次第だ。プログラミングの知識がある人であれば、いたずらに騒ぐことはないだろう」という――。

※本稿は、髙橋洋一『数字で話せ! 「世界標準」のニュースの読み方』(MdN)の一部を再編集したものです。

AIチャットボットのイメージ
写真=iStock.com/Vertigo3d
※写真はイメージです

AIが「知恵」を持つなんてありえない

AI(Artificial Intelligence)は、「人工知能」と訳されていますが、この「人工知能」という言葉が特に数字に弱い人たちに大きな誤解を与えているようです。知能という言葉から想像を働かせて、機械が「知恵」を持って判断したり勝手に動き出すのがAIだと思っている人が少なくありません。

だからAIに世界が乗っ取られるというストーリーのSF映画がすでに定番となって流行ったりするわけですが、AIが実際に「知恵」を持つことなどありません。AIは人間がつくったプログラム通りに動くだけです。

AIが人間より優れているのは、大量かつ高速にデータ処理ができること、に尽きます。

AIは人間がつくったプログラムにすぎません。したがって、「AI化で実現可能なことは何か」という疑問に対する答えはすべて、「それを人間がプログラム化できるかどうか」に還元することができます。

つまり、プログラム化できることはAI化が起こりえます。プログラム化できないことは、いくらそこにAIなるものがあってもAI化は起こりえません。

すべてはプログラムを書く人間次第

もちろん人間または人間社会に被害をもたらすようなAIは存在可能です。プログラムのなかにそういう命令を入れておけばいいのですから。しかしこれは、そのAIが破壊的な意志を持っているということではありません。

AIはプログラムを書いた人間の意図によって動くだけです。破壊的な意志を持っているのはAIではなくプログラムを書いた人間の方です。

ロシアによるウクライナ侵攻において無人ドローンによる攻撃は、2022年内はほとんどウクライナ側だけでしたが、2023年に入ってロシア側もそれを使うケースが数として10倍程度の規模で増えてきました。

ドローンはターゲットに対してピンポイントで攻撃することができますが、それはそのようにプログラムしてあるからです。プログラムの記述にミスがあれば、また、プログラムが改竄されればドローンは最初に意図したようには働きません。