「世界を乗っ取れるプログラム」とは?

「AIに世界が乗っ取られる」といった類の話をまことしやかにする人に対しては、ぜひ次のように問いかけてみてください。

「どういうプログラムを書けば世界を乗っ取ることができるのですか?」

ここで重要なのは、世界を乗っ取ることができるブログラムを書くことができるのであれば、それは同時に、世界が乗っ取られないようにするプログラムを書くことができるということを意味するということです。

プログラムのなかには、プログラムがプログラムを書く「進化型プロクラム」と呼ばれるものもあります。しかしそれも、どこまで書かせるかを決めるのは人間です。

アメリカのAI開発企業・OpenAIが2022年11月に公開したChatGPT(チャットジーピーティー)はたいへんな人気で、日本からOpenAIのサービスサイトにアクセスして利用実行した回数は2023年の5月中旬に過去最高の1日767万回に達したそうです。以降は横ばいの数字となっているとのことですが、日本からのアクセスはアメリカ、インドに次ぐ世界第3位ということです。

プログラミングを知っている人は慌てない

ビジネス企画書や大学のレポートが自動的に書けてしまうなど、盛んにその能力が宣伝されましたが、文章の生成機能は別として、ChatGPTは使用するデータベースを広げに広げることができているだけの話です。

たとえば料理のレシピなどはネット上に大量にあります。それを高速で読み込んで平均的なレシピをつくることは難しいことではありません。できあがったそれを、凡庸なレシピか画期的な改良レシピか判断するのは人間の方です。

こうしたことにいちいち驚くのは、コンピュータ・プログラムになじみがないからです。技術者でなくても、プログラムに少しでも触れたことがあってその原理を知っている人は、コンピュータの世界は実はどれも似たりよったりで、事情を知らない世間が針小棒大に言うだけであることがわかっていますから、いたずらに騒いだりはしません。

2020年に小学校、2021年に中学校でプログラミング教育が必修化されましたが、いいことだと思います。現代人は、スマートフォンをはじめ、大量のコンピュータ機器に取り囲まれる生活を送っています。

プログラミングを知っているということは、そうした機器の原理を知っているということです。何かしらの問題が生じたときにも、これはこういうことだなと推測ができます。少なくとも慌てふためくようなことはなくなるでしょう。

プログラミングの授業
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