日本で働き方改革が起きているように、海外でも新しい働き方が注目されている。イギリス在住で著述家の谷本真由美さんは「最近の若者は、生きていくだけの収入があれば満足という人が多い。日本の『窓際族』のような働き方が最先端になっている」という――。

※本稿は、谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない5』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

窓際の椅子に座ってくつろぐ人
写真=iStock.com/DragonImages
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海外のビジネスパーソンの理想は「窓際族」

最近の海外でのトレンドは「いかに働かないか」です。

英語圏でのトレンドワードは「Quiet quitting」――これは「こっそり辞める」という意味で、仕事を完全に辞職せず、ゆるい職場で昇進をめざさず適当にやって窓際状態を維持するという意味です。職場でいかにさぼるか、いかに働かないかが重要です。

日本のメディアでは「海外って定時で仕事が終わり、ワークライフバランスが充実していていいねぇ」と言い張ってきました。さらに海外在住の日本人のなかには同じようなことを吹聴している人がいます。それは低賃金低スキルの中以下の職場の話で、上位層や中以上の階層の仕事は過酷化してきているのです。

とくに中の上を越える知識産業は、市場がグローバルで時差が関係ないため競争相手は海外が多く、自国にも次々と外国人が来るので競争は激化し、そして知識が陳腐化するのも早いので常に勉強です。しかも利益追求の圧力が日本よりハンパないので、リストラや事業整理も厳しくてすぐクビになります。

「生きていくだけの収入があれば満足」

そういうわけで、海外の先進国ではこれまで時間外や深夜までの労働、週末は同僚とのチームビルディング活動で宿泊をともなう社員旅行に出かけるとか、上司の子どもの行事につきあう滅私奉公が当たり前でした。コネと根回しが日本以上に重要です。

そんな働き方に疲れたZ世代を中心に、会社との関わりは最小限にする動きが流行しています。コロナ禍で仕事と収入に重きをおくライフスタイルに疑問を抱くようになったのも大きいです。仕事ばかりしていても感染症でコロッと死んでしまうこともあるのです。

彼らは趣味や私生活を重視して時間外労働を拒否。同僚や上司ともつきあわず職場のイベントは無視、労働を最小限にすることで仕事から距離を置いています。当然、昇進・昇給は望めませんが、生きていくだけの収入があれば満足という人々なのです。