格差改善に向け、経営陣の動きは早かった

【山本】社内での反対や反感はなかったですか。特に男女間で説明できない賃金格差があることを公表することは、政府の開示義務を超えた取り組みで、やぶ蛇なのではないかとか……。

【工藤】確かに「バッシングされちゃうんじゃないか」とか。会社の“偉い人”は心配するかも。

【趙】反感はなかったです。でもこの話には、第1章と第2章があるんですよ。第1章としては、ペイギャップの現状を経営陣に共有し、報酬調整の合意を取りに行く。第2章としては社員にこの結果をどう伝えていくのかを考える。

まず第1章の経営陣の意思決定については、想定以上に早かったので、プロジェクトを先導した立場からするといろいろアピールしたいところですね(笑)。でも何よりも、メルカリがもともと持っているポリシーがあったから、意思決定が早かったんだと思っています。

私たちには、属性にかかわらず、競争力のある人に良い報酬を支払うというポリシーがあります。これが、メルカリが人的資本について持っているひとつの考え方です。そのポリシーに沿って意思決定が行われたとも言えます。

とはいえ、最初に7%という数字を経営会議で見せたときには、さまざまな反応がありました。

【工藤】さまざまとは?

【趙】それは男性・女性ということによって生まれている差ですよね。うちの会社のポリシーからすると、絶対に許容できない7%という数字です。「フェアな報酬制度と運用を行っている」という自負があるだけに、いろんな解釈がありました。例えば、「7%って大きいのか? 小さいのか?」とか。

【工藤】自負があるからこそ、「なんでこんな結果がでちゃったの」って防衛機制が働く。他にもいろんな理由があるんじゃないかって思っちゃう。それが役員の皆さんとかからも出てきたと。

男性と女性の間の不平等を表すイメージ
写真=iStock.com/Thapana Onphalai
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フェアに給料を出すこと自体が投資である

【趙】ですが2回目にはこのギャップを埋めるための是正措置の合意ができた。私としては、当然7%アップするための予算も計算しましたし、経営目線に立てば「これだけ予算があったら他のところに成長投資したい」と考えるのではないかと思っていました。

ですが、そこはギャップを是正するための「掛け捨て」のコストのような感覚ではなく、フェアに給料を出すこと自体が投資であるという考えがあったようです。この話を後で聞いて痺れましたね。

【山本】痺れますね~。

【趙】自社のポリシーに沿っただけという話ではあるんですが。

【工藤】でも綺麗ごとで経営はできない。そこであえて、フェアは大事だというミッションに誠実であろうとするのはいい経営判断ですね。

【趙】それはそう思いましたね。