国際監査では「同一労働同一賃金」が重視されている

【趙】きっかけは、去年ジェンダー平等に関する国際監査の「EDGE Assess」を受けたことです。その監査プロセスの中では、「ペイ・エクイティ」が重視されていました。

【工藤】ペイ・エクイティとは同一労働同一賃金のようなものでしょうか。

【趙】そうですね。欧米では男女格差の議論をするときに「ペイ・エクイティ」が重視されています。調査では、同じ役割や等級での格差を調べます。そこでEDGEから提供されたペイギャップの分析ツールが、重回帰分析をもとにしたものでした。

日本政府の男女賃金格差の情報開示義務で求められたのは、男性と女性の賃金格差の割合を出すことでした。ですが、この監査の経験があったので、割合を出すだけでは、ペイ・エクイティの調査をしたことにならないのではないかと考えました。日本と欧米との賃金格差の定義の違いや、メルカリとしてどうアプローチすべきかを検討して、議論の結果、両面から分析してみようとなったのが今回の経緯ですね。

実際にやってみたら全体平均で、説明できない賃金格差が約7%あることはわりとすぐ分かりました。

どうやって「説明できない格差」を縮めたのか

【工藤】分析結果に基づいて、即座に報酬調整を行い、7%から2.5%にまで格差を縮めたことも驚きです。どのような体制やチームで進めていったのでしょうか。

【趙】賃金格差の開示義務が2023年に始まることが決まったのですが、国内には分析やアクションの先行事例がありません。全部が手探りだったというのが、実際のところですね。

私たちのいるD&Iのチームがプロジェクトを組織して、そこにHRから、評価報酬チームと、データサイエンスの専門家たちがいるアナリティクスチームとが集まりプロジェクトをつくりました。

【工藤】データサイエンスの専門家がいるんですね。それは心強い。

【趙】苦労話を挙げればキリがないですが、例えばデータ分析の担当者が途中で退職してしまったり、結果的には社内から他の統計の専門性を持った方が異動してなんとか間に合ったのですが、綱渡りの連続ではありました。