2023年のラグビーW杯フランス大会を戦う日本代表には、日本人のほかに、7カ国にルーツを持つ外国人選手16人が選ばれた。なぜラグビー代表は多様性に富んでいるのか。『国境を越えたスクラム』(中央公論新社)の著者でノンフィクションライターの山川徹さんが、元ラグビー日本代表の平尾剛さんに聞いた――。(第2回/全3回)

20年前は「外国人を使ってまで勝ちたいか」と叩かれた

――2019年のラグビーW杯日本大会では、国籍を問わない代表チームのあり方が注目を集めました。今大会も7カ国にルーツを持つ16人の選手が日本代表として戦います(註)。平尾さんが出場した1999年の第4回W杯ではキャプテンのアンドリュー・マコーミック(ニュージーランド出身)を含めて、当時としては史上最多の6人の海外出身選手が選出されましたね。

あのときはマスコミからのバッシングが激しかったんです。外国人選手をたくさん起用してでも勝ちたいのか、と。

ぼくの周囲でも「外国人がたくさんいる日本代表ってなんなの?」と疑問を口にする人は多かった。肩入れしにくいと話す人もいました。

しかも、その前の95年W杯で、オールブラックス(ニュージーランド代表)として出場したジェイミー(現在の日本代表でヘッドコーチをつとめるジェイミー・ジョセフ)や(グレアム・)バショップも日本代表に選ばれました。

ジェイミー・ジョセフ(写真=CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons)
現在の日本代表でヘッドコーチをつとめるジェイミー・ジョセフ(写真=CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons

勝利を期待されたW杯本戦で日本はサモア、ウェールズ、アルゼンチンに3連敗を喫してしまった。もしも勝てていたら違う反応があったのかもしれませんが、もともとのバッシングに拍車をかける結果になってしまいました。

ただぼくにとってはマスコミや世間のバッシングが不思議でした。「メディアは何を言っているの? ラグビーはそういうスポーツなんだから当たり前のことでしょ」と。

(註)国際統括団体「ワールドラグビー」は、選手が代表資格を得る要件として、以下の4つを定めている。
①当該国で出生している。
②両親、祖父母の1人が当該国で出生している。
③プレーする直前の5年間、継続して当該国に居住している。
④プレーするまでに通算10年間当該国に滞在していた。