成功する人はどこが違うのか。脳科学者の茂木健一郎さんは「最も重要なのは、あきらめずにやり抜く力だ。その力は、前頭葉を鍛えることで身につけることができる」という――。(第1回)

※本稿は、茂木健一郎『運動脳の鍛え方』(リベラル社)の一部を再編集したものです。

2022年12月1日、後半、ゴール前にボールを上げる三笘(左端)
写真=EPA/時事通信フォト
2022年12月1日、後半、ゴール前にボールを上げる三笘(左端)(カタール・ドーハ)

脳を鍛えるにはどうすればいいのか

運動と学力(特に記憶力)について、最新の脳科学のエビデンスを交えて紹介しましたが、それ以上に皆さんに知っていただきたい興味深いエビデンスがあります。それは、運動によって「前頭葉」が活性化するということです。

前頭葉について説明する前に、まずは脳の仕組みについて簡単に説明しておきましょう。脳というのは、大きく分けると「大脳」「小脳」「脳幹」という3つの部位で構成されています。

脳全体のおよそ80%を占めているのが大脳です。この大脳には、主に思考や行動を司る「前頭葉」、知覚や感覚を司る「頭頂葉」、視覚を司る「後頭葉」、聴覚や記憶を司る「側頭葉」の4つの領域があり、このうちの前頭葉の大部分を占めるのが「前頭前野」という部位です。

私たち人間と動物の脳とを比べたとき、最も異なる発達部位こそ、この前頭葉なのです。動物の中で最も前頭葉が大きいとされるチンパンジーでも、人間の前頭葉と比較すれば3分の1程度だといわれています。

この前頭葉は、別名「脳の司令塔」とも呼ばれており、考える、判断する、選択する、アイデアがひらめく、集中する、感情をコントロールするなど、私たちが社会で生き抜いていくための重要な働きを担っています。逆をいえば、前頭葉の活動が衰えると物忘れが増えたり、感情的になりすぎたり、やる気がなくなったりしてしまいます。

では、どうすればこの前頭葉を活性化できるのか。勘のいい方ならもうおわかりですね。そうです。運動によって前頭葉を鍛えることができるのです。