ストレスを発散するにはどうすればいいのか。脳科学者の茂木健一郎さんは「自分がコントロールできることについてはベストを尽くし、コントロールできないことについては潔く諦めるのがいい」という――。(第3回)

※本稿は、茂木健一郎『運動脳の鍛え方』(リベラル社)の一部を再編集したものです。

都会生活のライフスタイル
写真=iStock.com/Chinnapong
※写真はイメージです

定期的に走っている人はストレスレベルが低い

手軽なストレス解消法といえば何でしょうか。お酒を飲んだり、自分の趣味に没頭したり、ぐっすり眠ったり……。さらには、温泉にでも行ってゆっくり体を癒すことを思い浮かべる人もいるかもしれません。確かに、ストレス解消に効果的であるとされる食べ物も多くありますし、気の合う仲間との食事は楽しく、温泉旅行などでもストレス発散できそうですね。

また、最近ではストレス解消法として注目されている「マインドフルネス」というものもあります。マインドフルネスの瞑想めいそうをすることで、ストレスでダメージを受けた海馬を活性化させて、認知症の予防にもなるという研究結果も発表されているそうです。

自分に合ったストレス解消法を取り入れて海馬をダメージから守り、認知症を予防するのもいいですが、このような一過性のもので一時的に乗り切るのではなく、脳科学の観点から特におすすめしたいのが、これまで述べてきた運動であり、私が実践している早朝ランニングを習慣化するということです。

ある研究データによると、定期的に走っている人はストレスレベルが低く、認知症の発症率も低いそうです。もちろん、それだけではありません。ランニングは、ウォーキング以上に身体の新陳代謝を活発にします。必要な物質を取り入れ、古くなった物質を外に排出する。新陳代謝が活発であればあるほど脳のモビリティは高まり、メンタルも強くなるのです。

ランニングするなら朝がいい

ただ、ランニングにはこうした身体的なメリット以上に、精神的なアプローチでもかなりの効果があることがわかっています。それは、無心になれるということです。

たとえば、ランニングをしているとき、皆さんは何を考えながら走るでしょうか。走り始めこそ、仕事の案件などを考えてしまうことがあっても、ある一定時間が経過すると、だんだんと無心になっていることに気づくはずです。無心でランニングをすることで脳の中の情報が整理されます。これは、先に述べたデフォルト・モード・ネットワークの働きですね。頭がすっきり爽快な気分になることでストレスを軽減するのです。

さらにいえば、朝の時間というのも、一つのポイントになってきます。朝日を存分に浴びながら走ることで、幸福を感じるセロトニンが出やすくなります。また、走ることで快感を得られるため、脳内報酬系の神経伝達物質であるドーパミンも放出されます。

つまり、朝の時間にランニングをするという極めてシンプルな行為が、セロトニンやドーパミンといった脳内物質を多く生み出すのです。特にドーパミンは、ストレス耐性があるため、ストレスが多い環境にも強くなれるのです。