これからの社会で求められる能力とは何か。医師の和田秀樹さんは「時代ごとのテクノロジーによって、評価される能力は変わる。以前は優秀な技術者が評価されてきたが、これからは技術者に適切な指示を出す能力が求められる」という。作家・橘玲さんとの対談をお届けしよう――。

※本稿は、和田秀樹『前頭葉バカ社会』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。

VRヘッドセットを装着した年配のアジア人女性
写真=iStock.com/somboon kaeoboonsong
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「バカでも幸せ」がだんだん難しくなっている

前回からつづく)

【橘】わたしたちが生きている知識社会はものすごく残酷で、賢い人間が賢くない人間を搾取するから、「バカでも幸せ」がだんだん難しくなっている。アメリカでは、うまくやっているのはウォール街やシリコンバレーにいるような、極端に知能が高い人間だけという現実が、トランプが大統領になったあたりから顕在化しました。

【和田】日本とは逆ですよね。

【橘】白人の高卒ブルーワーカーが、アルコール、ドラッグ、自殺で「絶望死」している国ですからね。知識社会はこれからますます高度化していくでしょうし、いずれ日本もそうなっていくと思います。

【和田】そう思います。賢いやつから見たら、だますのは朝飯前でしょ。ちょっと勉強すれば相手の認知バイアスなんてすぐにわかるわけだから。ただ、格差社会という言葉で簡単に片付けられがちだけど、昔の格差社会と違うのは、今は無一文の人が大化けして勝ち組になる可能性もあるんですよね。

【橘】格差社会を批判する人たちが困っているのは、イーロン・マスクにしてもジェフ・ベゾスにしても、貴族や大富豪の子どもではないことですよね。自分の力で起業して成功したのだから、どこが正義に反するのか、説明がつかなくなっている。

これからは「のび太」が評価されるかもしれない

【和田】つねに新しいことにチャレンジできる人が賢いということですよ。もとはといえば、アマゾンは本の通販会社だし、イーロン・マスクの宇宙ビジネスやツイッターの買収が正しいかはわからないけれど、電気自動車で終わらずに、さまざまな道を模索している。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の4社はどこも創業時から異なる形に進化しています。

いろいろなことが、これから変わっていきますよね。医者の世界だったら、これまでは画像診断で病巣を見落とさない人が名医だったけれど、これからの画像診断はAIに勝てるわけがない。AIロボットが手術をしたほうがうまい、ということにもなるでしょう。

【橘】バカの基準も変わるでしょうね。

【和田】『ドラえもん』で考えると、劣等生ののび太がドラえもんというAIロボットにすぐに泣きつき、ドラえもんが未来から機械を持ってきて問題が解決する話なわけでしょ。これをスティーブ・ジョブズとアップル社の優秀な技術者に置き換えると、ジョブズは無理難題を次々に出す役で、優秀な技術者たちがなんとかそれを叶えちゃう。

以前は、こうした技術者のほうが評価されていたのに、今はジョブズのほうがすごいってことになっていますよね。そう考えると、のび太のような落ちこぼれが、これからはすごい人になる可能性がある。ドン・キホーテみたいな正気とは思われない人でも、優秀な技術者さえ見つければ、大金持ちになれるかもしれない。