賢く生きるために必要なことは何か。医師の和田秀樹さんは「変わり続ける、成長し続けることがもっとも大切だ。自分がバカになってないかどうかはつねにチェックしたほうがいい」という。作家・橘玲さんとの対談をお届けしよう――。

※本稿は、和田秀樹『前頭葉バカ社会』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。

注意とパワーハラスメント
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成長できない人が一番のバカ

【和田】いやみに聞こえるかもしれませんが、東大医学部卒という肩書きのことをいわれるのに以前から違和感があって、それは自分が歳をとればとるほど強くなっています。60歳を過ぎても学歴のことをいわれるなんて、この40年間あまり進歩していないと思われているに等しいと感じるんですよね。

対談のテーマは「前頭葉バカ」ですが、僕自身は変わり続ける、成長し続けることがもっとも大切なことだと思っています。それで、いつも悪あがきをしている(笑)。なぜなら、成長できない人が一番のバカだと思っているから。よくいる日本のクズ学者に多いパターンで、留学していた何十年も前の知識に固執しているとか、教授になってからまったく勉強していないとか、まさに前頭葉バカの典型的な例ですよ。高学歴やえらい肩書きの人たちこそ、自分がバカであることに気がついていない人が多いというのが、わたしの印象ですね。

バカは、自分がバカだと気づかない

【橘】わたしが『バカと無知』で書いたのも、まさに「自分がバカであることに気づいていない人がバカ」ということです。もともと『週刊新潮』で「人間、この不都合な生きもの」を連載していたとき、「ダニング=クルーガー効果」(注1)は認知心理学では有名なのに、日本ではあまり知られていないので、紹介したらおもしろいんじゃないかと思ったのがきっかけでした。

バカは、自分がバカであることに気づかないから修正できない。頭がいいか悪いかは関係ない。自分は何を知らないのか、どこでつまずいているのかさえわかれば、誰かに聞くなり、自分で調べるなりして、問題解決の方法がわかるじゃないですか。和田さんが『受験は要領』などで書かれていることとまったく同じですよね。今ならAIを使ってみるとか、やりようはいくらでもある。

でも、そもそも間違っていることに気づいていないとしたら、どうしようもない。すごく賢い人でも、「わたしが学んできたことや信念は正しい」と、それ以外が見えなくなると、かなり変なところに暴走していく危険はあると思います。

(注1)能力や専門性、経験値などが低い人は自分の能力を過大評価する傾向があり、逆に能力の高い人は自分を過少評価する傾向がある、という認知バイアスに関する仮説。コーネル大学の心理学者デイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが1999年に行なった実験で確認された。2000年にイグノーベル賞心理学賞を受賞。