離党した場合は「政党」の要件が失われる

重複立候補していた秋本氏は、「政党」により集票され、当選者を配分する中で、「個人」としての努力の結果、惜敗率が高いために議席を獲得することとなった。

これを一個人の問題とするのではなく、一般化して考えるならば、「重複立候補により、小選挙区で敗北した候補者による比例復活の議席について、政党を離党した場合の扱いについてのルール作り」の必要性がある、という課題に到達する。

というのも比例復活当選を果たした候補者の議席は、「政党」の議席でもあり、「個人」の議席でもあるからだ。不祥事により「政党」を離党した場合には、その議席の「政党」としての要件は失われることとなってしまう。

そしてその状態でもその地域ブロックの有権者の代表である「個人」としての要件のみで国会議員を継続することができるという制度的な課題がある。比例復活当選には、「政党」の要件と「個人」の要件の二つがあり、そのうちのどちらかが欠ければ、失職するべきだという考えも成り立つ。

岸田首相は「政党の責任」で決断すべき

さらに「政党」を離党するという状況に陥った「個人」が、そのまま国会議員として公職を維持できるというのは、その「政党」に投票した有権者にとっては、その思いを裏切られたという意識を持つだろう。

そうした意識は「政治への信頼」を大きく損なうものであり、それが冒頭の岸田内閣の支持率の下落に表れているのではないだろうか。これは単に岸田内閣という「一内閣への信頼」を大きく損なうだけではなく、「政治そのものへの信頼」を空洞化させる可能性がある。

岸田首相は早急に、比例当選議員の政党を離党した場合の扱いについて、「政党」の議席として議員辞職もすべきなのか、そうではなく「個人」の議席なので議員辞職は必要がないのか、リーダーシップを発揮して判断する必要がある。そうでなければ、議員の進退は政党の判断ではなく、個人の判断という現在の状況は続く。そうして政党の責任は回避できるということになるが、それでよいのだろうか。

「政党の責任」として国会の中でルール化していくことが、与党として政権担当する公党の「政党の責任」ということになる。今回の事例によって明らかになった制度的な瑕疵かしについては「政党の責任」で決断する必要がある。秋本氏は「政党」としての議席で当選した比例復活議員であり、自民党の責任は免れないからだ。公党として、どう判断するかを国民に示すことで、失われた「政治への信頼」を回復することになるだろう。

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