しかし、これはあくまでも平均妥結額で見たもの。アッパー・ミドルはもともとボーナスの支給額が大きいだけに、同じ15%の率でもカットされる絶対額は膨らむ。私のところに相談にきたアッパー・ミドルのなかには「ボーナスがカットされたうえに残業代もなくなって、年収が200万円もダウンした」という夫婦が少なからずいる。

では、これから景気が回復すればアッパー・ミドルの年収が元に戻るかというと、そうは問屋がおろさない。かつての年功序列型賃金の影響が尾をひき、いまでも彼らの年収は実際の働き以上の水準にある。会社サイドとすれば、これから会社の屋台骨を支えていく20代、30代を厚遇したいと考えるのは自明の理。そのおこぼれを期待することすら難しくなっている状況なのだ。

それでも会社に自分のポストがあるのなら、まだ恵まれている。なぜなら彼らアッパー・ミドルに対するリストラ圧力は、決して弱まることはないからだ。2009年、大手百貨店が50歳以上を中心に退職金の割増額を最大2000万円にすることを条件に早期退職者を募ったところ、社員の4分の1もが応募して話題になったことは、まだ記憶に新しい。

しかし、そうした好条件に応じたとしても、これまで通りの生活が維持できるかどうかははなはだ疑問である。40代、50代で同じような年収を保証してくれる職など、目を皿のようにして探しても、まず見つからないだろう。そうやって無職のまま1年間を無為に過ごしただけで、割増分の退職金の大半を食いつぶしてしまう。後はロウアーの仲間入りに向けて、貧乏スパイラルの坂道を一気に転げ落ちていくだけなのだ。