同族・中小・地方企業にはビッグモーター的風土が残る

組織の方針などが記された同社の経営計画書も報道されているが、そこには社員を奴隷扱いにするパワハラ系・空虚で大げさなスポ根系の言葉が並んでいました。

「燃える闘魂。経営にはいかなる格闘技にも勝る激しい闘争心が必要」
「会社と社長の思想は受け入れないが仕事の能力はある。(そんな人は)今、すぐ辞めてください」
「経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」
「毎日口に出して言う言葉 幸せだなあ! 俺(私)はツいてる!」

背中をそり返し、直立不動で、計画書を毎朝唱和して行われる朝礼など、まるで軍隊のような閉塞的で硬直的な組織体質もあったとされます。

こちらを指さし怒声を浴びせてくる人
写真=iStock.com/kk-istock
※写真はイメージです

日本では、こうした「強権型・カリスマ型のリーダーシップは決断力・実行力がある」として理想化する傾向があります。上下関係に基づき、上司は部下に「命令」し、部下は上司に「ほうれんそう」をするという主従関係が当たり前とされているのです。

こうしたトップダウンの組織は一時的に成果を上げても、長期的に簡単に破綻してしまいます。ただ、上の言うことに盲従すればいいという考え方は、何より、部下の考える力、主体性をうばい、イノベーションを起こす気風が醸成されず、トップの暴走を招きやすいからです。

今、グローバルでは、リーダーシップに求められる最も重要な資質は「共感力」だと言われています。実際に、「強権型」・鬼「教官」型はもう古く、もっとチームとして一人ひとりの力を伸ばす新しい形のリーダーシップが必要である、と考えられ、アップルのティム・クック、マイクロソフトのサチャ・ナデラ、グーグルのサンダル・ピチャイなど、多くの優良企業のトップが、「共感型」に置き換わりました。

教官・強権型から共感型へ。そのシフトの大きな波は、日本にも押し寄せており、WBCの栗山英樹監督、サッカーワールドカップの森保一監督も、命令より、問いかけをし、一人ひとりに寄り添い、やる気を引き出す、「チーム重視」「対話重視」型で大きな成果を上げました。最近、就任する大企業の社長は皆、そろって、この後者のスタイルです。

まさに、リーダーシップの革新が求められている中で、顕在化した、「昭和型リーダーシップ」のひずみ。ビッグモーターは「完全に時代に乗り遅れた企業」として、淘汰は必至と思われますが、実は、こうした組織はいまだに決して珍しくありません。

日本の同族企業、中小企業、地方の企業などの多くには、こうした風土が根強く残っています。令和の今、「強いトップダウン型リーダー信仰」からの脱却とコミュニケーションスタイルの変革が求められているのです。

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