肩たたきには必ず“予兆”がある

解雇を強行する企業とクビを宣告される社員の特徴は、上下関係の厳しい体育会系の部活動に酷似している。先輩の言うことは絶対。One For Allかつ、先人が築いてきた伝統を守る……。私は2社から不当解雇された経験から、退職を促される前には必ず、「注意指導」という名の最終通告の機会があることを学んだ。

ビジネスマン
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例えば、私が人生初のクビを宣告されたブラック企業。ここでは解雇指定日の約4カ月前に代表取締役から「営業成績が悪いのに退勤時間が早い。上司から何度も注意されているのに改善されない。なぜ、なぜ、と問題を深堀りしろ」と詰められたことがあった。

帰るのが早いといっても月100時間近くのサービス残業をこなし、手取りはたったの16万円。しかし、残業代や残業時間という概念がない社風(あるいは業界風土)で働いている人間からすると、あくまで真剣な注意指導だったようだ。

そこで言われた通りに「なぜなぜ分析」を試みたが、最終的には「始末書を提出するまで帰宅させない」と言い渡された。渋々と始末書を提出したのは25時過ぎ。もちろん終電はなかった。なお、この日から2カ月が過ぎた頃から退職勧奨がスタートしている。代表曰く「汚名返上のチャンスを与えていた」そうだ。

始末書
筆者提供

こちらは単なる「話し合い」だと思っていたが…

2回目のクビを宣告された企業でも、退職勧奨前に一度だけ「話し合い」の場が30分ほど設けられた。

あえて「話し合い」と表現したのは、私自身は「転勤先の職場は慣れたか等、気さくな雰囲気の軽い雑談」といった認識でしかなかったのだが、会社側は私が不当解雇の取り消しを求めて訴えると、裁判で「注意指導を行った」と主張してきた。

ここで大切なのは、会社としてはあくまで「注意指導の場を設けている」と認識しているということ。もし、あなたが会議室など人目につかないところへ呼び出されて上司や役員との「話し合い」が行われたら黄色信号。退職を促されるカウントダウンが始まったと考えるべきだろう。

このような注意指導が行われる背景にはおそらく複数の要因がある。問題社員の更生を期待している。あるいは純粋な先輩心から善意でやっている……。しかし性格の悪い私は、「注意指導をした事実を残したいから」という企業側のしたたかな裏事情があると腹黒く推測している。