酒が苦手な人は無理に飲まなくてもいい

根っからの酒飲みからすると、酒に関するいい情報は、長い論文の中の一節であっても注目したくなるもの。最近、覆された「酒は少量であれば健康にいい」という定説も同様で、裏を返せば条件付きであり、実は「少量でもリスクがある」ことが最新研究によって判明している。あくまで想像だが、こうした結果を見ると、酒飲みにとって好都合だった定説は、酒飲みによって流布されていたのかもしれないとすら思えてしまう。

「酒好きの方にとって、今回の結果は少し残念だったかもしれません。ただこの研究結果をもって言えるのは、『無理に飲まなくてもいい』ということです。そもそも酒は所得アップや健康増進のために飲むものではなく、個々に楽しむものだと思います」(川口教授)

確かに酒飲みにとっては無念だが、これまで無理して飲み会につきあっていた人にとって、今回の結果は朗報である。この結果をもってすれば、『酒を飲まないと出世できないぞ』という上司を黙らせることもできそうだ。酒飲みにとっては、大切な免罪符を取り上げられた気分だけれども。

ビール
写真=iStock.com/mapo
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飲める、飲めないで区別するのはもう時代遅れ?

川口教授によると、今後はさらに同研究を進めていく予定だという。

「今回は東アジア3カ国の人を対象に、アルコールパッチテストを用いて得た結果となりました。イギリスなど欧米諸国にあるゲノムバンクの大規模なデータを使って、より精確に飲酒能力と所得の関係性を調査したいと考えています」(川口教授)

コロナ禍を経て、あえて飲まない「ソバーキュリアス」というライフスタイルや、アサヒビールが打ち出した「飲めても飲めなくても、みんな飲みトモ」という「スマートドリンキング」も取りざたされるようになった今、飲酒に対する考え方が大きく変わろうとしている。社会における酒の立ち位置はどうなるのか、研究結果とともに見届けたい。

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