老いと金欠

2人の合計で使えるお金は35万円以上あるが生活は楽ではない。

「最大の出費は医療費です。わたしが60歳、妻が58歳。この年齢になるとあちこち悪くなって病院と縁が切れないんですよ。わたしは糖尿病持ちのうえ高血圧と高脂血症もあって6週間ごとに通院し、血液検査と尿検査をやっているんです」

ベンチに座ってスマートフォンを使う年配の夫婦
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです

1回の通院で病院の窓口に払う医療費は2800円。調剤薬局で6週間分の薬を出してもらうと約5700円も請求される。

「往復のバス代も加えたら、1回病院に行くと9000円も出ていく。年間で9回ですから8万円超えるもの。そのうえ市販の風邪薬や鼻炎薬、胃薬、整腸剤、消炎鎮痛剤のぬり薬などで年間に8000円ぐらい出ていくから嫌になる」

健康自慢だった奥さんも、この4年の間であちこちに不具合が出てきている。

「妻は53歳頃から子宮筋腫をやっちゃって。いくつかの治療を受けていたけど芳しくなく、筋腫だけを切除する手術を受けました。このときは3週間入院しましたね。これが引き金だったのか、その後もあちこち悪くなっている」

まず五十肩で左腕が痛くて上げられなくなり、ずっと湿布と痛み止めを服用しているそうだ。しかし、あまり効かないようで、3カ月前から2週間ごとに痛み止めの注射もするようになった。

「今まではなんともなかったのに、今年から花粉症になって耳鼻科通いもしたし。去年1年間に妻が医療機関の窓口で払ったのは約8万円ぐらいになります」

こんな塩梅なので2人合わせた医療費は18万円近い。収入がそう高くないのだから結構な金額だと思う。

交友関係、生活圏は狭まるばかり

「そのうえわたしは去年半ば頃から眼のかすみも出てきましてね。心配だったので眼科の先生に診てもらったら初期の白内障だということだった。そのとき老人性白内障と言われまして、ちょっと落ち込んじゃったよ」

今のところは点眼薬だけで対処しているが、いずれは人工水晶体を入れる手術が必要になると言われた。

「身体の衰えは切実に感じますよ。就寝中に両脚のふくらはぎがこむら返りになって飛び起きたことがあるし、昼の仕事中に耳の奥が痛くなり、その後も1時間ぐらい耳鳴りが止まらなかったことがある。妻も年に数回だけど肋骨ろっこつの辺りに鈍痛が出て横になることがあるし。確実に老いているなあと悲しくなる」

会社が駄目になってからは交際の範囲、交友関係、生活圏などがどんどん狭まっている。

「何をするにも仕事を中心に回っていたんだなと思いますね。だから仕事が上手くいかなくなったら疎遠になる、そういうことですよ」

幸いなことに自分の姉弟、妻の兄などの親族に金銭的な迷惑をかけなかったことが救いだ。だけど経営していた会社が倒産したことは明かしていない。同情されたり心配されるのが嫌なので自主廃業したんだとだけ告げてある。

「今の生活ですか……? 個人的な生活に潤いとか楽しみはありませんねえ」

昔から絵を描くのが趣味でカルチャーセンターの水彩画講座に通っていたことがある。そこで親しくなった人たちとスケッチ旅行に行ったり、絵画展などに連れ立って出かけていたが、今は趣味に費やすお金も時間もないからすっかりご無沙汰だ。

「親戚の慶弔事があると、まず最初にいくら包まなきゃならないんだと考えちゃってね。我ながら嫌になる」