孫正義氏が「原発に頼らない社会」を訴え続けている。その実現をめざすうえで発送電分離と電力自由化を主張する。従来、発電所と送電網は電力会社が一体運用してきた。それを分離・開放することで、再生可能エネルギー発電を含めたPPSの参入が促され、競争によるコスト減、料金値下げが可能というわけだ。

だがこの動きに、経済産業省で電気事業法などエネルギー行政に携わってきた東京財団の石川和男上席研究員は疑問を呈する。理由は「日本は人口減で電力需要が広がらない。世間には脱原発のムードが漂い、当面は火力にシフトすることになる。ところが、天然ガスの国際価格が乱高下しており、無理に分離をすれば電気料金の値上げになりかねない」からだという。

実際、発送電分離先進国のアメリカの例がそれを物語る。自由化を進め、ISO(独立系統運用者)を設立した州の家庭用電気料金のほうが、自由化せず発送電一貫を維持する州よりも1kWhで4セントほど高い。分離により、発送電コストが高めな事業者も参入するからで、発送電分離と料金値下げに相関関係はない。

とはいえ東日本大震災後、世論の槍玉に挙がった電力会社の地域独占への批判は根強い。経産省も2014年以降に発送電分離を進める方針だ。しかし、石川氏は「電力需給が逼迫するいま、求められているのは安定供給のはず。そこに視点を据えれば、ここ30年以上にわたり廉価を維持してきた仕組みを壊す必要はない」と話す。ここは落ち着いた議論が必要だろう。