実際、週に一度のデイケアで下半身の筋力をつけるような体操を継続したところ、直腸が飛び出す症状も落ち着き、出血もなくなったといいます。紙パンツを常時履くようにしたことで、排泄の失敗への不安もなくなり精神的にも落ち着き、かえってトイレできちんと排泄できることも増えたそうです。

専門医との相性の問題もあったのかもしれませんが、かかりつけ医のほうが、適切に患者さんに寄り添い、症状との向き合い方をきちんと教えてくれたということだと思います。

体力が低下するような余計な手術はしない。自分の今持っている筋力をできるだけ維持する。気にしすぎない。紙パンツなどを積極的に活用してストレスを軽減させる。これらはすべて、老いによるさまざまな不調と上手に付き合うための極意とも言えます。

早めの紙パンツで「生活の質」は向上する

私は、排泄コントロールに少しでも不安を覚えたら、早めに紙パンツを利用することをお勧めしています。

紙パンツを履くことに抵抗を示す人がいます。自分はまだ紙パンツなんかのお世話にならない! と意地を張りたくなる気持ちもわからなくはありません。でも、履いてしまえば、不安やストレスから解放されて、安心して外出もできるようになるのに、もったいないと思います。

しかも、最近の紙パンツは薄くて性能もよく、外側からはまるで気づかれません。いわゆる、昔ながらの「オムツ」のイメージからは様変わりしています。

和田秀樹『70歳からは大学病院に行ってはいけない』(宝島社新書)
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年齢とともに筋力が衰えるのは、腕力や脚力だけではありません。当然ながらインナーマッスルも衰えていきます。骨盤の底を支える骨盤底筋も加齢とともに衰えていきます。それによって、排泄関係の失敗が起きやすくなるのです。

骨盤底筋を鍛える体操ももちろんやるにこしたことはないですが、一方で、「万が一漏れてしまったら」と怯えてびくびくしながら過ごすのと、紙パンツを履いて「万一のときも安心」という気持ちを手に入れるのと、どちらがより健康的に過ごせそうでしょうか。安心感を手に入れられれば、行動範囲もぐっと広がるでしょうから、健康にはよいことばかりです。

無理をしない。場合によっては、「治そう」としすぎず、その症状を受け入れて、上手な付き合い方を考える。ぜひ、いろいろな「不調」を感じたとき、専門病院に飛び込む前に一歩立ち止まって考えていただきたい視点です。

そして、まずは信頼しているかかりつけ医に相談してみてください。

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