地域利権の代弁者を国会に呼ぶための「宿」

実際には、週末だけ地元に帰るという国会議員は少数で、週に2度3度、東京と地元を往復しているケースが多い。地元支援者の冠婚葬祭への参列が欠かせない「仕事」になっているからだ。もちろん、国家のための「仕事」ではなく、選挙に勝って国会議員の地位を守るため「仕事」である。

地元との間の交通費もばかにならない、と思われるだろうが、そこにはもうひとつの特権である「国会議員用鉄道乗車証」がある。新幹線のグリーン車を含めてJR全線に無料で乗車できるパスだ。

東京に家を格安で用意するのも、往復の足代をタダにするのも、ある意味、明治時代に国会が開設されてから続いている慣行である。つまり、地方で選ばれた議員が東京に出てきて地方の意見を言ってもらうためには必要な経費だ、というわけだ。地方の要望を国政に伝え、道路や橋の建設など地元のための公共事業を地方に引っ張っていく。それが国会議員の仕事という「伝統」だ。

そこには自分の地域の利権を離れて、日本という国家が抱える問題をどう解決していくか、という本来国会議員が果たすべき役割は二の次三の次になっている。そんな地域利権の代弁者に、国会に来てもらうための「宿」が議員宿舎なのだ。

「宿」だから家族と秘書しか入れない

あくまでも「宿」だから、外部からの客を自室に招き入れることはできない。家族と秘書しか入れないのだ。家族ではない親しい女性を招き入れてスキャンダルになった大先生もいた。

本来、国会議員は24時間、国家のことを考えて働いてもらう必要がある。特に大臣・副大臣・大臣政務官・大臣補佐官など、政府の一翼を担う立場になった場合、24時間即応態勢が求められる。

緊急事態が発生していた時にゴルフをしていた、といったことが大きなスキャンダルになって以降、地震などの災害でも、大事故でも、あるいは安全保障上の問題が起きても、すぐに官邸に集まるなどの即応態勢が取られるようになった。まあ、「国家」を考えれば当たり前のことなのだが、ようやくそうした体制が取られるようになったのだ。

だからこそ、「格安」の議員宿舎が必要だ、という議論が国会議員の中からも出されるが、東京におらずに地元にばかり帰っている国会議員には耳が痛いだろう。