インボイス導入の前に国民の誤解を解消せよ

世の中で当然のように思われている「預り金ドグマ」からすると、中田氏が解説するとおり「消費税を消費者から預かっていながら、納税しなくてもいいという『益税』をなくそうというのがインボイス制度」ということになる。一般的な見解に基づいて、わかりやすく解説する教育系ユーチューバーの中田氏としては、当然の説明であろう。

郷原信郎“歪んだ法”に壊される日本 事件・事故の裏側にある「闇」』(KADOKAWA)
郷原信郎『“歪んだ法”に壊される日本 事件・事故の裏側にある「闇」』(KADOKAWA)

この動画は、既に256万回視聴されており、通常のテレビ番組の視聴者数にも匹敵する。このような動画を通じて「預り金を納税しない『益税』はズルい」という認識が、さらに世の中に広まっていく。しかし、消費税は(転嫁が予定された)「対価の一部」である。実際には消費税の転嫁が十分にできず、実質的にも「消費税を預かっている」とは到底言えない状況は、小規模零細事業者ほど顕著だ。

そのような誤解のままでは、従来「益税」で潤ってきた免税事業者が、ある程度不利益を受けるのは当然、というような誤った考え方によって、零細事業者の救済を十分に行うことが阻害されることになりかねない。

政府、国税当局は、「消費税は預り金ではなく、欧州型の付加価値税」であるということを、明確に認め、国民の誤解を解消し、従来、「預り金ドグマ」によって不利益を受けてきた事業者の救済を図りつつ、インボイス制度が付加価値税を円滑に効率的に運用していくために不可欠であることの理解を求めていくべきであろう。

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