日本の医学教育の問題点は何か。医師の和田秀樹さんは「日本の医学は臨床をおろそかにし、宗教化している。まるで患者を真面目に診ていない」という。ジャーナリストの鳥集徹さんとの対談を紹介する――。

※本稿は、鳥集徹編著『医者が飲まない薬 誰も言えなかった「真実」』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

注射器を持ちこちらをにらむ医師
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ワクチンは抗体価を上げればいいというものではない

【鳥集】コロナについては、感染を防ぐという視点だけでなく、高齢者のフレイル(注)をどう防ぐか、子どもたちの心身の発達に支障はないか、自粛を続けていて経済的問題はないかといった、多様な視点から対策を考えなくてはいけなかった。それなのに、そうしたことはほとんど考慮されませんでした。

(注)フレイル……加齢により心身や認知の機能が衰えてしまった状態。①体重減少(年間4.5kgまたは5%以上)、②疲れやすい、③歩行速度の低下、④握力の低下、⑤身体活動量の低下などで判断される。フレイル状態になると要介護率や死亡リスクが高くなる。

【和田】専門家会議のメンバーに、高齢者の専門家、精神医療の専門家、免疫学者なども入れるべきなんですが、入っていなかった。この前、奥村先生と対談して本を作ったのですが(『「80歳の壁」は結局、免疫力が解決してくれる』宝島社新書)、たとえばワクチンにしても、ただ抗体価を上げればいいというものではないんです。

免疫細胞に「これが敵だ」って、教え込ませるのが本来の目的です。それなのに、「抗体価が下がっているから、また打て」といった的外れなことを言う。もともとの免疫機能が下がっている人に、ワクチンを打って教え込もうとしたって、ダメなものはダメなんです。

【鳥集】ということは、高齢者で免疫機能が落ちている人は、ワクチンを打ってもあまり効果がないかもしれないということですか。

【和田】僕はそう思います。だって、満身創痍そういの兵隊に、「こいつと戦ってこい」といくら命令したって、無理でしょう。