友人と疎遠になることでメンタル不調に

今回のAさんに当てはめて、考えてみたいと思います。

就職、異動や転勤などで新しい生活が始まると、それまでの友人や同僚たちとの関係が疎遠になることがあります。新生活に集中することはいいことですが、このことが、裏目に出ることがあります。

不安や悩みやストレスがあるとき、人は、医師やカウンセラーではなく、友人や家族に話すことでも、9割の人が「ラクになった」と思えます。仕事帰りに友人と軽くお茶をする、1日の終わりにちょっとでも人と話す、そんなことで、人は不安やストレスや悩みを溜め込まずに、軽いうちに解消できるのです。

しかし、新生活の始まりと共にこのような付き合いから疎遠になってしまうと、ちょっとした不安やストレスや悩みが気軽に解消できずに、溜まってしまうことがあります。不安やストレスは、溜まるほど解消が難しくなり、知らず知らずのうちに五月病の原因、すなわちメンタルヘルス不調の原因になってしまうのです。

Aさんは、4月からの転職先で結果を早く出したいばかりに3月から頑張りすぎてしまっていました。結果、友人や同僚たちとの関係が疎遠になり、息抜きの時間、リラックスできる時間が持てていなかったのでしょう。特に、3月以降ほぼ息抜きなしで走り続けてきていたことで、疲労が蓄積し、心身ともに余裕がなく、何かあった時に柔軟にしなやかに対処するということができなくなってしまっていたと思われました。

ビジネスパーソンの服を着た子供が成長を測定している
写真=iStock.com/Choreograph
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高すぎる期待が自分を追い詰めてしまう

もう一つの原因は、自分に対する“高すぎる”期待です。

新年度が始まると、多くの人は気持ちを新たにし、自分自身に期待をかけます。外国語や資格の教材が1年のうち最もよく売れるのはこの時期だとも言います。お稽古事や自己研鑽けんさんは、思った通りにうまくいけばいいのですが、うまくいかない場合もあります。そのときに、思ったほどはうまくいっていないという結果を受け入れることができる人はいいのですが、中には、自分はあんなに頑張ったのだからと考え、そういった現実を受け入れることができない人がいます。また、うまくいっていないのだったら頑張ることをすぐに諦められる人はいいのですが、自分は頑張りが足りないからもっと頑張らなければいけないと考えてしまうと、その自分への高すぎる期待が、自分をもっと追い詰めてしまうこともあります。