日本の石炭火力に反対した欧州で異変が起きている

5月に広島でG7(主要7カ国首脳会議)が行われるが、それに先立ち、4月に札幌で気候・エネルギー・環境相会合が行われる。

この会合で発表される共同声明案に対して、欧米から批判が集まっているようだ。日本が二酸化炭素の排出量が多い石炭火力発電の全廃時期を明示していないことに対して、欧米が強く反発しているという話である。

フランス・パリの路上の充電スタンド
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石炭火力発電の全廃は、とりわけ環境対策で世界のイニシアチブを取りたいヨーロッパ勢の悲願でもある。2021年に英国のグラスゴーでCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)が開催された際も、石炭火力発電の早期全廃を主張するヨーロッパ勢に対して、中国やインドが反旗を翻し、米国がその仲裁に入ったことは記憶に新しい。

そのヨーロッパで、今、行き過ぎた環境対策に対する「揺り戻し」が生じている。

オランダでは環境対策に反対する農民政党が大躍進

例えばオランダでは、3月15日に全12州の州議会選挙が行われた際に、政府による環境対策に反対する農民政党「農民市民運動(BoerBurgerBeweging、BBB)」が20%近くの得票率を得るとともに、5月の上院選で第1党に躍進することが確実となった(図表1)。

【図表】オランダ上院の獲得議席見通し

BBBが批判するのは、政府による過度な脱窒素政策である。

オランダのマルク・ルッテ連立政権は、2030年に窒素排出量を半減することを目指している。その際、やり玉に挙げられたのが、窒素を多く排出せざるを得ない農業と酪農・畜産業だ。窒素排出量を削減するために、農業と酪農・畜産業の規模を縮小させようと環境政党は主張した。

ルッテ連立政権は前回2019年の上院選で過半数を失っており、法案を成立させるためには環境政党の協力が必要な状況となっていた。

そのためルッテ連立政権は、環境政党が主張する急進的な脱窒素政策の推進を余儀なくされたわけだが、それに反発した農家や酪農・畜産家たちがBBBに票を入れ、今回のBBBの大躍進につながったのである。