目先の賃上げ政策では日本は変われない

一方、経済が長期停滞に陥ったわが国では、成長を目指すよりも守りの心理を強める人が増えた。GAFAのような企業を生み出すのはわが国には難しいといった考えの増加はその一つだ。ただ、実態としては、わが国では給料が上がることよりも、過去の雇用慣行に依拠した地位を失うことに抵抗感や不安を強める人が増えたというべきだろう。その結果として、米国などのIT先端企業とわが国企業の事業変革、成長などスピードの差が拡大したと考えられる。

わが国が持続的に賃金増加を目指すためには、終身雇用・年功序列の雇用慣行から脱却しようとする企業の増加が必要だ。それが、正規・非正規の賃金格差を是正し、スキルや成果に応じて人々が所得を得る環境整備につながる。その上で、政府が規制緩和を行うなどして労働市場の流動性を高めるなど構造改革を行ったり、学びなおしの制度を拡充したりすることがあるべき政策運営の形だろう。

遠回りに見えるかもしれないが、わが国全体で賃金の伸び悩みを解消するためには、終身雇用・年功序列などを基礎とする日本型の雇用システムからの脱却が欠かせない。

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