日本の雇用の7割は中小企業が占めている。ところが、そうした中小企業は従業員の給与を上げるどころか、自社の生き残りのために給与を下げることしかできていない。どこに問題があるのか。中小企業庁の角野然生長官に聞いた――。
中小企業庁の角野然生長官
撮影=プレジデントオンライン編集部
中小企業庁の角野然生長官

なぜ中小企業の労働者の給料は上がらないのか

――日本の労働者の給与は上がらないどころか、下がっています。2022年7月に内閣府が発表したデータによると、1994年の世帯所得の中央値は505万円だったのに対し、2019年は374万円でした。この25年で130万円も下がったわけです。とりわけ雇用の7割を占める中小企業の役割は重要です。なぜ中小企業の給与は上がらないのでしょうか。

【図表】全世帯の所得分布
出典=内閣府「令和4年度年次経済財政報告」より

【角野然生長官】日本はバブルが崩壊して以降、長期的なデフレに陥り、経済成長率も他国に比べて低い状態が続いてきました。その中で、企業は商品価格や賃金といったコストを抑えることでアジアとの国際競争に打ち勝とうとし、消費者は賃金が上がらないことから将来を不安視して消費を抑えてきました。

その結果、消費が低迷してさらにデフレが進み、企業に賃上げを行う余力が生まれにくくなるという悪循環が続いています。こうした状況の中では、中小企業は親事業者や取引先から価格を抑えるようにと要請されることが少なくありません。

すると、原材料費が上がっても売値はそう簡単に上げられない、つまり価格転嫁しにくいので、賃上げのための原資を確保するのも難しくなる。これが、中小企業で働く人の給料が上がらないという現実につながっているのだと考えています。