コロナで売り上げが7割減ったレストランはどう再建したか

――伴走支援によって事業再構築に成功した事例を教えてください。

課題解決型の伴走支援によって、コロナ禍でパフォーマンスが向上したケースもありますし、高齢の経営者が息子への事業承継を宣言するなど行動変容につながったケースもあります。

また、埼玉県のあるイタリアンレストランでは、コロナ禍によって売上高が7割も減ってしまいました。そこで経営者は事業再構築補助金を活用して、レストランをもともと扱っていた地元産の食材を販売する地産地消セレクトショップに改装したのです。商品の背景や生産者の思いなども一緒に発信することで他店との差別化を図り、売り上げを伸ばしていきました。

在庫をチェックするマネジャーとバーテンダー
写真=iStock.com/NickyLloyd
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ある分析機器メーカーは、私たちとの対話の中で2つの課題を洗い出しました。ひとつは幹部人材の育成不足、もうひとつは属人的経営から組織的経営への移行が必要なのに、その現状にきちんと向き合っていないということです。

そこで、前者に対しては経営幹部候補による「次世代経営チーム」を組み、後者に対してはこのチーム主導での中期事業計画の策定を伴走支援しました。その結果、この企業は特定の取引先に依存する経営体質を改善して他社からの売上比率を高める中期計画を策定し、同時に事業再構築補助金を活用した新規プロジェクトにも取り組み始めました。伴走支援によって経営力が向上した好事例だと思っています。

福島の被災した経営者支援で学んだこと

――なぜ課題設定型の伴走支援に着目したのですか。

私は福島県で、原発事故によって会社やお店を畳んで避難を余儀なくされた中小企業の方々の支援活動に携わってきました。皆さんを個別に訪問してお悩みを聞き、その解決策を考える。そうした活動を、途中からは福島に移住して現地で行っていました。

最初は、どの訪問先でも「国の人間が何しにきたんだ」と怒られたものです。でも、何度もお宅や農作業の場に伺って、場合によってはちょっとお手伝いもしながら、対話と傾聴を重ねていけるように努めました。そのうちにだんだんと信頼関係が生まれ、「街に戻れるようになったらじいちゃんから受け継いだ店を再開したいんだ、手伝ってくれ」といった話をしてくれるようになったのです。