マッチングアプリから仮想通貨取引に勧誘される

最近の手口では、仮想通貨の取引への勧誘が圧倒的に多い。偽の仮想通貨取引所を紹介され、「僕の指示通りにやれば大丈夫」とまずは取引の練習から入る。「利益」が出たことをデータで示され、「夢を叶えるチャンスです」「仮想通貨で稼いだお金で一緒に世界を旅行しよう」「日本は貧富の差が激しい。多くの人は努力しても家を買う余裕がない」などともっともらしい言葉を次々に掛けられ、現金を振り込んでどんどん深みにハマってしまう。

データ上は、投資した金額以上に数字が増えているので、儲かったような気になる。ところがいざ引き出そうとすると「手数料が必要です」、「所得税を支払ってください」などと追加の振り込みを指示される。おかしいと訴えてもらちが明かず、そこでようやく詐欺だと気づくパターンが大半だ。

特に仮想通貨の場合は、練習による「実績」で相手を信用してしまうため、そこまでの恋愛感情がなくても、一獲千金のチャンスかもしれないと期待する。ゆえに本当の意味での「ロマンス」かどうかは微妙な場合が多い。被害者の1人が語る。

「そこまで本気にはなっていませんでした。だって会ったこともないですから。でも振り込んだお金が増えたデータを見せられ、相手の指示通りに取引すれば儲かるかもしれないという気にさせられたんです」

一旦、数十万円や数百万円の大金を注ぎ込んでしまうと、今度はそれを取り返そうという心理が働き、後に引けなくなる。

やりとりは全てスマホで完結するため、相手と会うこともない。会おうと持ち掛けても、もっともらしい理由ではぐらかされるのがオチである。

「イエメンで国際平和維持軍に参加している」女性からのメッセージ

一方、相手の犯人は、プロフィール写真と同一人物ではない。ネットで引っ張ってきた写真を無断で使う、いわば「仮面」を被った詐欺師なのだ。使われる顔写真は欧米系が多かったが、最近は、中国、韓国などのアジア系も増えている。

メッセージを送ってきたアカウントのプロフィール
メッセージを送ってきたアカウントのプロフィール(写真=筆者提供)

年齢は20〜50代で、職業は軍人、医師、投資家、実業家、金融系など、基本的には「勝ち組」を装っている。メッセージの言語も2〜3年前は英語が主流だったが、翻訳アプリの発達により、最近はほとんど日本語が使われている。

そんな犯人たちは一体、どこに姿をくらましているのだろうか。

1年半ほど前のこと。私のもとに、プロフィール写真が米兵女性のFacebookアカウントからメッセージが入った。端麗な容姿に加え、「イエメンで国際平和維持軍に参加している」と自己紹介され、詐欺師だと確信した。その時にはすでにロマンス詐欺の取材を始めており、犯人の特徴は心得ていたからだ。私は騙されたふりをしてメッセージのやり取りを続けた。すると、相手からの「愛の囁き」が始まった。

「ハニー! あなたはこの世界で最も大切な人。だからあなたを愛している」