有名大学に通う意外なメリット

伝統の中央大学の演劇学科では、理論から実技までを体系的に学ぶ。1・2年時に演劇概論、韓国演劇史、演劇文献研究などの講義を受け、話術や舞台技術などの実技も磨いていく。3・4年時には、作品制作実習、演出実習、演劇制作などの講義を受ける。演技者はもちろん、演出家の立場からも作品制作を学ぶ。本当にカリキュラムが充実している。

韓国の中央大学
韓国の中央大学(写真=Chunganguniversity/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

次に、これまでの韓国芸能界で最も多くの著名な俳優を送り出してきた東国大学の演劇学科の特徴は、専門性にこだわった英才教育に力を入れていることである。

教授陣は海外で演劇に関する修士号や博士号を取得した演劇研究者が多く、学生には演劇・映画・テレビドラマの演技者養成だけでなく、舞台美術・照明・機材の操作にも精通する技術を習得させている。

さらに、最近は素晴らしい俳優をたくさん卒業させている漢陽大学の演劇映画学科の特徴は、芸能人のための入学枠が設定されているということだ。この制度を生かして入学した著名な俳優も多い。

この場合の受験は面接だけ。ただし、過去に出演した映画・ドラマの作品本数や演じた役の重要度が厳密に審査されて、わずか数名だけが合格できるようになっている。

そうした芸能人枠で入っても、仕事の都合で卒業できない人も多いというから、俳優と大学を両立するのは難しいと言わざるを得ない。

以上、3つの大学のことを紹介したが、世界で最高レベルの大学進学率を持っている韓国において芸能の世界をめざそうとすれば、専門的で体系的な学問を徹底的に学べる環境が揃っている。そうした中で、スターは頭角を現してくるのである。

また、韓国で俳優をめざす人が演劇関連学科に進むのは、専門的に演技を学ぶことはもちろんだが、同時に、芸能界の学閥システムに加わりたいという狙いもある。

同じ大学の先輩が俳優として力があれば、後輩にもメリットが大きいのだ。そういう意味で、俳優として成功するために学閥を利用したいという思惑も見えている。

芸能活動の致命傷になる兵役問題

韓国の男子は成人後に一部の例外を除いて誰でも兵役の義務を負う。この「一部の例外」というのは、オリンピックの3位以内、アジア大会の金メダリスト、権威ある国内・海外の芸術系のコンクールで優勝あるいは2位以内、などである。

しかし、大衆文化(音楽・映画・ドラマ)ではどんなに成功しても兵役免除制度がないので、スターといえども30歳までに兵役に入らなければならなかった。

さらに、現在は兵役延期規定が厳しくなって、28歳までに兵役のために入隊しなければならない。

韓国軍の兵士
写真=iStock.com/Im Yeongsik
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そういう意味でも、早くから俳優として成功した若者たちは、兵役問題を乗り越えていかなければ、その先の俳優活動の展望も見えてこない。

本書で最初に取り上げる10人の男優は、すべて20代のときに兵役に入っている。

とにかく、兵役は韓国の成人男子を憂鬱ゆううつにさせる不可避の国民的義務であり、それが彼らの人生にとても大きな影響を及ぼしている。