もし、みるくがいなければ、私はその獣医師さんと出会うこともありませんでしたし、「喪中症」という言葉も知らないままだったと思います。そして、喪失感から抜けられないままでいると何が起きるかを、知ることもなかったでしょう。

少しずつ受け入れていけばいい

こうして、3匹の犬が私の元から旅立っていきました。私は犬たちの一生を通して、「生老病死しょうろうびょうし」を学びました。これも仏教の大切な教えの一つで、避けることのできない、生きること、老いること、病気になること、死ぬことという4つの苦しみを指します。

深い悲しみを味わいましたが、今はお供えのお水を換えるたび、「今からお仕事に行ってくるよ」「今度はこの新入りの子を守ってあげてね」などと話しかけています。縁があって15年一緒に居た家族ですから、姿は見えなくても近くにいて、私のことを見守ってくれていると思うからです。

髙橋美清さんと、現在飼っている保護犬出身の「副住職」たち
髙橋美清さんと、現在飼っている保護犬出身の「副住職」たち(撮影=プレジデントオンライン編集部)

いきなりスパッと、亡くなったペットの存在を切り捨てる必要はないと思います。生きていた時と同じように会話して、そこから少しずつお別れを受け入れる心の準備をしてもいい。

うちは檀家を持たないお寺ですが、お葬式の依頼を受けることがあります。そこでお話しするのが、「お葬式は亡くなった方を送る儀式だけど、残った私たちの心の区切りをつける儀式でもある」ということ。喪失感が一生消えない傷にならないよう、みんなで集まり、故人の話をして、お互い支え合っていきましょう、と。

仏教葬は、とてもよくできていると思います。葬式や初七日があって、四十九日の法要があり、一周忌、三回忌、七回忌と続きます。そういった場に伺うと、遺族の方のお顔や雰囲気が時間の経過で変わっていくのがよく分かります。まさに、時間が薬になって癒やしてくれる「時薬ときぐすり」です。

今月のひとこと
今月の言葉

仏教には「共生ともいき」という言葉があります。この言葉には、人間だけでなく、すべての生きとし生けるものについて、ご縁があって一緒に生きた時間を大切にしましょうという意味があります。たとえ姿かたちは見えなくても、あなたのペットはきっと近くでみてくれているはず。その時、悲しい顔ばかりしていたら、彼ら・彼女たちも心安らかでいることはできません。

鏡を見て、あなたの一番いい顔で過ごしてみてください。そして、時に感謝の言葉をかけてあげてください。きっと、困りごとが起きた時に助けになってくれるはずです。

(構成=山脇麻生)
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