絶縁した娘宛てに「恨みの手紙」を遺して死んだ母親がいた。なぜそこまでしなければならなかったのか。『絶縁家族』(さくら舎)を出したライターの橘さつきさんが、家族に代わって契約者の死後をサポートする団体を取材した――。

※本稿は、橘さつき『絶縁家族 終焉のとき 試される「家族」の絆』(さくら舎)の一部を再編集したものです。

薄暗い病院の廊下で車椅子に座っている高齢女性の後ろ姿
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費用目安は100万円…「契約家族」に注目が集まるワケ

生前契約のパイオニア的存在である「NPOりすシステム」を訪ねた。りすシステムのりす(Liss)はLiving・support・service(生活支援サービス)の略称である。同法人の前身は1990年に設立された「もやいの会」。

「もやいの会」はお墓の維持に困っている人や、入るお墓がなくて悩んでいる人に「家族」「血縁」「宗教」「国籍」などの垣根を越え、自らの意思で「終のすみか」を決めておき、死後納骨できる合葬墓「もやいの碑」を運営している団体である。

その合葬墓「もやいの碑」に入る墓友の集まり「もやいの会」の会員の要望から、「りすシステム」は1993年に日本で初めて生前契約を受託する法人として発足した。

2000年には契約により行った仕事の確認とお金の支払い役として「NPO日本生前契約等決済機構」を設立し、同年に「りすシステム」は生前契約の受託機関としてNPOに組織変更をした。以来“「契約家族」契約”の先駆けとして全国に支部を広げている。

気になる費用は、死後事務の基本料金が50万円。入院や施設入居の保証人など生前の事務は必要に応じて依頼する。財産の管理や日常の話し相手、ペットの世話に墓参の代行、介護認定の立ち会い、医者選びの手伝いなどもメニューにある。申込金(5万円)に預託金、公正証書の作成費用などで、費用は100万円程度になるケースが多い。

「生前契約」「任意後見」「死後事務」

「りすシステム」が目指すのは最後まで自分らしく生き、自己責任で死後の準備をする「21世紀型の社会保障システム」。「家族の役割引き受けます」「死後の支払い引き受けます」といった生活支援を提供している。

自立した生活を送っているときから、判断力が低下した時、そして死後にいたるまで、しっかり支援が続けられるように「契約」を結ぶことで、当法人が「契約家族」として「家族」の役割を担うというシステムだ。

契約の三本柱は「生前契約」「任意後見」「死後事務」である。