好きにやらせるが「初年度黒字」が条件

情熱で突っ走るタイプの大塚をうまく操縦しているのが社長の和泉だ。一営業マンだった大塚が突然言い出したロボット事業を認めたばかりでなく、1度ベンチャー企業に転職した大塚を再度迎え入れ、05年には執行役員に抜擢、ロボット事業の本格展開を支援している。しかも和泉は大塚に「これをやれ」と言ったことも「だめ」と言ったこともない。しかし一方で、「初年度から利益を出す」ことを求めた。大塚はそれに応えている。

大塚は、人からよく「おまえの動きは読めない」と言われるそうだが、本人は「自分のなかではきちんと理屈もあるし、一貫性もある」と主張する。和泉にはその一貫性が見えているのかもしれない。

大塚を支えるスタッフたちも型破りだ。大塚自ら厳選したメンバーに共通する特徴は「オタク」性。面接では「何かのオタクですか」と必ず聞くことにしている。

「いわゆる“萌え”系の人もいますよ。彼を入社式で初めて見たとき、僕の部署に絶対連れてきたいと思った」

面接でこの社員に、自分のことをどれくらいオタクだと思うか聞いた。
「廃人レベルですね」

この一言で、採用決定。ほかにも音楽オタク、自動車オタクなどが揃う。「異分野のオタクが集まると、相乗効果が生まれるんですよ」と大塚。いま、このチームで、「感情認識」という最先端分野に取り組む。ここを突破すれば、人とロボットの距離はぐんと近くなり、市場は一気に広がるだろう。(文中敬称略)