「ガンダムランドみたいなものをつくる企画書もあるんですよ。時期を見て本当にやりたいな、と思っています」

真顔でそう語るのは、日本SGIの戦略事業推進本部長、大塚寛(36歳)。同社新規事業開拓の責任者だ。「新規事業」の中核はロボットである。なぜロボットなのかといえば、「僕がやりたかったから」(大塚)。

ふつう、新規事業といえば、自社の事業ポートフォリオを分析し、市場の魅力度や事業の実現可能性を測定した結果を役員の前でプレゼンして……といった道筋で動き出す。が、日本SGIの新規事業は、大塚の「やりたい」だけで始まった。産業用ロボットを除けば、そもそもロボットの定義さえはっきりしない状況で、市場規模など計算しようがない。

「スター・ウォーズ」の世界を現実にする!

1999年、当時、グラフィックコンピュータの営業マンだった大塚は顧客を通じて、科学者の北野宏明と知り合う。北野は人工知能研究の一環として、人間型ロボットの開発に携わりながら、自律移動型ロボットの世界競技大会「ロボカップ」を提唱し、97年には第1回の実現にこぎつけていた。北野が描く「人とロボットが共存する未来」に、大塚はたちまち魅了された。子供の頃夢中になったガンダムやスター・ウォーズのイメージが現実と結びつき、「自分もこの分野で何かをしたい」という思いが爆発したのである。その思いを社長の和泉法夫にぶつけて説得した結果、2000年に日本SGIはロボカップのスポンサーになった。大塚はそれを突破口にして、実質ロボット事業部をつくってしまう。

日本SGIの主力事業は、ビジュアル・コンピューティングの技術を軸にしたワークステーション、サーバなどの開発・販売と、各種ソリューション。そのなかでは異彩を放つ、ロボット事業だが、単なる「客寄せ」ではない。7年目にして、10億円規模のビジネスに成長している。携わる人間も13人に増え、ロボット事業を目指して日本SGIを志望する学生も増えた。1人の社員が天啓を受けるようにして始めたロボット事業は、「結果として」、日本SGIのブランド強化や多角化推進に貢献している。