解剖学者の養老孟司さんが『子どもが心配 人として大事な三つの力』(PHP新書)という本を出した。養老さんは「『バカの壁』で訴えた都市化の問題が行き着くところまできて、子どもが次々と死ぬ社会になってしまった。この社会のおかしさを、一度立ち止まって考えてほしい」と語る。前後編の特別インタビューをお届けする――。(前編/全2回)(構成=ノンフィクション作家・山田清機)
解剖学者の養老孟司さん
撮影=稲垣徳文
解剖学者の養老孟司さん

日本は「児童虐待社会」

たまに東京にいくと、夜の9時ごろ、地下鉄で子どもが走り回っているのです。こっちは爺さんですから叱ろうかと思ったんですが、思い直した。

おそらくこの子たちは、学校が終わった後に塾か習い事に行っていたのではないか。夕飯を食べたのかどうかはわからないけれど、こんな時間になってやっと解放されて、だからこうして地下鉄で走り回っているのではないかと。

こうした場面に遭遇すると、つくづく日本社会は「児童虐待社会」だと思います。

実際、日本は子どもの自殺が大変に多い国です。令和3年版の自殺対策白書(厚労省)によれば、わが国の10~39歳の死因の第1位は自殺です。G7の中でも15~34歳の死因の第1位が自殺である国は日本だけ。つまり、国際的に見ても際立って異常な状態にあるのです。

僕が子どもの頃は、もちろん病気や事故で亡くなる子どもはいましたけれど、学齢期の子どもが自殺するなんていうことはまずなかった。そんなことがあれば「異常な事件」として扱われたと思いますが、いまや、子どもの自殺は普通の出来事になってしまった感があります。