中国では漢方薬や鍼灸などの伝統医学「中医」の地位が高い。習近平国家主席はコロナ対策に効果があったとして、中医の権威に勲章を授与した。メディアでは「中医によってコロナの重症化ゼロ、再発ゼロ、感染ゼロが達成された」と報じられたこともある。なぜここまで影響力があるのか。『中国「コロナ封じ」の虚実 デジタル監視は14億人を統制できるか』(中公新書ラクレ)を書いた高口康太さんに聞いた――。(後編/全2回)
習近平国家主席はコロナ対策功労者4人に国家勲章と「人民英雄」の栄誉称号を授与。新型コロナウイルスワクチンの開発チームを率いた中国軍事科学院の陳薇氏(左)の隣にいるのは72歳の伝統医学「中医」の専門家・張伯礼院士(=2020年9月8日、北京・人民大会堂)
写真=AFP/時事通信フォト
習近平国家主席はコロナ対策功労者4人に国家勲章と「人民英雄」の栄誉称号を授与。新型コロナウイルスワクチンの開発チームを率いた中国軍事科学院の陳薇氏(左)の隣にいるのは72歳の伝統医学「中医」の専門家・張伯礼院士(=2020年9月8日、北京・人民大会堂)

街中のいたるところに監視カメラが設置されている

前編から続く)

——近年、中国のデジタル技術を用いた言論統制や、人民を監視するシステムが国際的な注目を集めていますが、一般の人たちはどう感じているのでしょう。

中国では街中のいたるところに監視カメラが設置され、先進国では人権侵害の懸念から利用が制限されているAIによる顔認証機能もごく当然のように使用されています。なかには勘弁してほしいと思っている人はいるはずですが、それは少数派だと思われます。大多数は気にしていません。実際に監視カメラについて話を聞くと「言われてみれば、カメラあるね」というような反応がほとんどです。

私自身もそうなのですが、久しぶりに中国に行くと町中に設置された監視カメラの数にドキッとするんですよ。でも、2、3日すると風景のなかに溶け込んで気にならなくなる。

中国の現状は、哲学者のジェレミ・ベンサムが考案した監獄の監視モデルである「パノプティコン」に近いのかもしれません。刑務所の中央に監視塔を設置するだけで囚人たちが行動を制限するようになるというでしょう。あれと、同じような状況になっていると言えるかもしれません。

——新型コロナの感染拡大でロックダウンした町で、ドローンを使って外出した人を監視していたというニュースには驚きました。

拡声器付きのドローンを巡回させて外出した人に警告を発した以外にも、農業用ドローンを活用して、感染者が出たエリアを消毒したりしたそうですよ。

またデジタル技術を駆使して、感染者の発見や陽性者の隔離も合理的、効率的に行った。コロナ禍でのデジタル利用に関しては、日本も参考にしたほうがいいのではないかと感じる点も多々あります。