法相経験者が刑事裁判で実刑判決を受けるのは初めて

6月18日、東京地裁は公職選挙法違反(買収、事前運動)の罪に問われた元衆院議員で元法相の河井克行被告(58)に対し、懲役3年、追徴金130万円(求刑=懲役4年、追徴金150万円)の実刑判決を言い渡した。

東京地裁に入る河井克行被告
写真=時事通信フォト
東京地裁に入る河井克行被告=2021年3月23日午前、東京都千代田区[代表撮影]

法務大臣経験者が刑事裁判で実刑判決を受けるのは初めてというが、子供でも分かるような違法行為を国会議員の身分にありながら、悪びれることもなく、実行に移すのだから実刑判決は当然である。

河井被告は2019年7月の参院選をめぐる大規模買収事件で起訴された。今年3月の公判中に保釈されたが、今回の実刑判決に伴い、再び身柄を拘束された。河井被告側は即日控訴した。

判決によると、被告は2019年3月から8月にかけ、広島選挙区の自民党公認候補だった妻の河井案里氏(47)=有罪確定=を当選させるため、地元の地方議員ら100人に計2870万円を配った。河井被告は選挙運動を取り仕切る総括主宰者だった。

当初、河井被告は買収目的を否定して無罪を主張していた。しかし、3月の被告人質問で一転して起訴事実を認め、衆院議員を辞職した。昨年6月の逮捕以降に受け取った議員歳費相当額(700万円)を贖罪寄付したことも挙げて執行猶予を求めていた。

河井被告は菅首相に近く、法相就任も菅首相が働きかけた

国会議員でありながら選挙で自分の妻を当選させるために現金をばらまく違法行為自体が、極めて悪質で前代未聞である。しかも犯行直後に法務大臣に就任するというのだから開いた口がふさがらない。

河井被告は広島県議を経て1996年に衆院議員に初当選し、計7回の当選を果たした。その間、首相補佐官や自民党総裁外交特別補佐などの要職を歴任し、1昨年9月11日には初入閣して法相に就任した。しかし同年10月31日、問題の案里氏の参院選挙でウグイス嬢(車上運動員)に対する違法報酬疑惑が週刊文春の報道で浮上し、わずか2カ月足らずで法相を辞任した。

ちなみに案里氏は2001年に河井被告と結婚し、2003年の広島県議選で初めて当選し、その後の参院選で当選した。

河井被告は菅義偉首相に極めて近かった。菅首相の支持基盤である無派閥議員グループの1つを主催するなど援助を惜しまなかった。菅首相もそんな河井被告に応え、法相への抜擢を後押しした。安倍晋三首相(当時)に対し、官房長官だった菅首相が強く推薦することで「河井法相」が実現したのである。