20年3月以降、日本政府は中国や韓国のほか、ヨーロッパなどからの入国制限を強化する一方、日本への渡航警戒レベルを引き上げたり、渡航の自粛勧告や海外渡航の禁止を打ち出す国も増えている。パンデミックの終息が見通せない中で、インバウンドがどこまで落ち込むか、底が知れない。また回復の過程もおそらく長期間かかると思われる。

もちろん、観光業以下、インバウンドに依存してきた業界には大打撃である。しかし、東日本大震災のときもインバウンドは激減したが、1年後には訪日客数はほぼ回復している。新型コロナ問題が終息すれば、福岡などを賑わせていたクルーズ船などを除いて、訪日外国人は必ずや戻ってくるはずだ。

11年には年間600万人余りだった日本のインバウンドは右肩上がりで増え続け、5倍以上に膨れ上がった。政府は「2020年には2000万人、2030年には4000万人」から「2020年に4000万人、2030年には6000万人」に目標を上書きして、「観光立国」の実現を目指してきた。とはいえ現実には爆発的なインバウンドの増加に受け入れ体制の整備が追いつかず、さまざまな課題が山積したままだ。新型コロナによる落ち込みをむしろ奇貨として抜本的な改善策を実行するいいタイミングだ。

東日本大震災のような災害、あるいは9.11テロや新型コロナのような予測不能のリスクはついてまわる。それを乗り越えた先に「観光立国」への道が拓けているのだと思う。

日本にあるポテンシャルをフルに発揮せよ

今や年間約3000万人のインバウンドのうち約1000万人を中国人観光客が占めるが、対前年比の伸び率(14.5%増)を見てもまだ成長余力は大きい。私は年間4000万人に届いたときには、2000万人が中国からの訪日客だろうと見ている。

先行指標になるのが台湾人で、台湾人の行動パターンを香港人がトレースし(なぞり)、さらにそれを本土の中国人が追い掛けるという傾向がある。19年は中国、韓国に次いで約489万人の台湾人が日本を訪れた。台湾の人口が約2300万人だから、年間で台湾人の5人に1人ぐらいは日本にやってくる計算になる。それぐらい台湾人は日本が好きだし、刺身も温泉も大好きなのだ。元々中国人は生魚を食べないし、人前で裸になる習慣もない。しかし、今は刺身や温泉を楽しみに日本にやってくる香港人は多いし、中国本土からの訪日客にも広がっている。