最短の道は「日本語脳」を強化すること

私は24歳からアラビア語を始め、4年8カ月で外交交渉の通訳まで務めることができました。アラビア語の「ネイティブ脳」があろうはずもありません。その代わり、日本語からアラビア語への「置き換え」、「日本語脳」の強化の訓練を「徹底的」にやりました。

これこそが、日本人が外国語を習得する「最短の道」だと私は思います。

これは、英語をやり直したい方にとっても同様です。ですので、皆さん、「ネイティブ脳」を作るという無謀な努力をする時間があったら、その分、「日本語脳」を鍛えることに集中してください。

「ネイティブ脳」は「わかったつもり」がこわい

また、大事な点として、「ネイティブ脳」がないのにネイティブのように日本語を介さずに勉強すると、いちばん怖いのが、「わかったつもり」になってしまうことです。

中川浩一『総理通訳の外国語勉強法』(講談社現代新書)
中川浩一『総理通訳の外国語勉強法』(講談社現代新書)

そうすると肝心の本番のビジネスシーンで空回りしてしまい、頭で考えていることが正しい外国語で出てこないという事態になりかねません。

私の場合は、そもそもアラビア語・日本語の辞書がない中での学習だったので、仕方なくアラビア語をアラビア語で、あるいは英語を介して理解する段階を経ざるを得ませんでしたが、学習の最終段階になると、いかに自分がアラビア語を日本語に訳せないか、正しく理解していないかを痛感させられました。

「わかったつもり」になっているだけで、実際には何の身にもなっていなかったのです。

日本語訳がついた外国語の題材を使う

さて、実際の学習に際して、あなたにまずトライしていただきたいのは、自分が話すトピック、内容を考え、それに見合う題材を探すことです。その題材は、「日本語脳」をフル回転させるため、必ず日本語と外国語双方が揃った文章を使ってください。

あなたが私のアラビア語のように、本当に初心者からのスタートでなければ、特に英語であれば、あなたに見合った題材が探せるはずです。今の時代、ネットでも書店でも、英語はもちろん、主要言語であれば上級編に至るまで、日本語の訳がついた題材が見つかるはずです。

参考までに、英語であれば、次の教材はインターネットで無料でアクセスできるので積極的に活用していきましょう。

NHK「世界へ発信! SNS英語術」
https://www.nhk.or.jp/snsenglish/にアクセスすると、「特集」のコーナーに、外国人とのコミュニケーションに役立つ様々なジャンルの文章が入っていて、日本語訳も付いています。あなたの関心に合わせて題材を選びましょう。ビジネスパーソンであれば、ラジオ番組「世界へ発信! ニュースで英語術」のサイトがおすすめです。

「TED日本語」
TED(Technology Entertainment Design)は、アメリカのカリフォルニア州などで幅広いジャンルの講演会を主催しているグループです。http://digitalcast.jp/ted/にアクセスすると、「ニュースと政治」のコーナーに、「ビジネス」「グローバル問題」などの項目があり、日本語訳も付いていますのであなたの仕事に関連のある分野を選んでみてください。

話したいトピック、仕事に必要なトピックを選ぶ

そのほかにも、有料となりますが、ジャパンタイムズが出版している「The Japan Times NEWS DIGEST」、『CNN English Express』編集部編の「CNNニュース・リスニング」「高校生からのニュース・リスニング」「初級者からのニュース・リスニング」には様々なトピックがあり、日本語訳もあるのでおすすめです。

これらも参考にして、あなたが外国人と話したいトピック、仕事に必要なトピックを選んでください。

え、これまでそんな勉強の仕方はしていなかったのに、ある日、いきなり題材を選ぶのは無理ですって?

たしかに、そうかもしれませんね。でも是非トライしてほしいと思います。いや、それでもいきなりは無理という方は、これまでどおり、最初はあなたの使っている与えられた参考書を活用するのも良いでしょう。ただし、その際も、与えられた順番通りに勉強する必要はありません。是非そこにあなたの意思を働かせてみてください。

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