仕事における「生産性」とは何か。公認会計士の林總さんは「日本の働き方改革関連法は、真の生産性向上にはつながらない。今必要なのは、ドラッカーがいう『知識労働生産性』だ」と説く。その理由とは――。

※本稿は、林 總『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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会計からみた「働き方改革」に欠落している大きな問題

さまざまな分野で偉大な功績を残してきたドラッカーは、生産性の研究においても超一流でした。数々の論文は、驚くべきことに21世紀を生きる私たちに必須の内容となっています。

巷間、日本の企業はホワイトカラーの労働生産性が低く、それゆえ休みを取とらずに長時間働かなくては仕事が回らないと言われてきました。このことが、労働者に精神的、肉体的な無視できない悪影響を及ぼすに至ったことで、「働き方改革関連法」が成立しました。

主な内容は、

(1)時間外労働の上限規制
(2)年次有給休暇の確実な取得
(3)正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止

です。

そして、この有給休暇の取得義務に違反した場合には「30万円以下の罰金」という罰則が定められました。いささか乱暴な表現になりますが、この法律は、働く時間を短縮せよ、同一労働には同一賃金を支払え、さもなくば罰金をとる、というものです。

私が『ドラッカーと生産性の話をしよう』の執筆を思い立ったきっかけは、この「働き方改革関連法」に強烈な違和感を覚えたからでした。働く時間を短縮すれば労働生産性は向上するはずにちがいない、との考えが見え隠れするからです。しかしながら、「関連法」が労働生産性の向上の解決策にはなり得ません。事実、いまでも隠れ残業が行われています。そして、なによりもドラッカーのいう「知識労働」の概念が欠落しています。