女性管理職の育成に積極的に取り組む企業がある。育成法の1つが「シャドウイング」だ。シャドウ(影)のようにそばで部長を観察する。そこで管理職の仕事や意味、やりがいや責任を学ぶ。女性管理職を育成するという風土づくりや社員の意識改革も、女性管理職育成には欠かせないという。

「シャドウイング」で部長職を観察する

バーコードやICタグなどの自動認識ソリューションを手掛けるサトーホールディングス(HD、東京都目黒区)。国内グループ会社は10社となり、グループ全体でダイバーシティを推進し、女性の管理職の育成に力を入れる。

現在、国内グループ全体の正社員が1961人で、管理職は615人(2018年3月時点)。そのうち、女性は50人で、管理職全体に占める比率は約8.1%。ここ数年の推移では2014年で33人、17年が50人で次第に増えている。ただし、一部の企業のように数年で急きょ、女性管理職を増やすことはしていない。

現在、男女ともに管理職への昇格は以前に比べるとハードルが高くなりつつあるという。サトーHDダイバーシティ推進委員会副委員長の高橋麻子さんは「数年前より管理職の登用規定や役割を再定義したこともあり、管理職の登用数は以前よりは減っている」と説明する。

再定義の1つが、ラインの管理職(部下がいる課長や部長など)と専門職の管理職(部下がいない課長や部長など)の役割とコンピテンシーをより明確にしたことだ。部長職になる時には、役員との面接も始めた。商品開発統括部の福澤修統括部長は「昇格のハードルは相対的に高くはなっていると思う」と語る。

昇格のハードルを上げながら、現在少ない女性の管理職の育成強化を目指しているために、計画的に段階的に育成を進める。その施策の1つが、「シャドウイング」である。これは、グループ会社・サトーテクノロジー(2018年4月にサトーに統合)で2017年に試みたものだ。

シャドウイングは、管理職の候補もしくは管理職になったものの、経験が足りない社員が部長などと約1カ月~1カ月半、行動を共にする取り組みである。シャドウ(影)のようにそばで部長を観察する。管理職というポジションの意味や仕事、やりがいや責任などを感じ取ってもらうことを意図している。

開発本部の齋原光和子さん

2017年5~6月にシャドウイングに参加した商品開発統括の量産開発部メカグループ長・齋原光和子さんは、「女性管理職数や管理職全体に占める比率は、まだ少ないように感じる」と話す。

「現在、正社員の男女比は約8対2。女性の管理職の数がもっと増え、比率が上がることが好ましいのではないか」

2003年に新卒(技術職)として入社した。同期生は約50人で、そのうち技術職は5人。女性は、齋原さん1人。エキスパート(専門職)の課長を経て、2017年4月にグループ長(ラインの課長)に昇格した。現在は商品開発統括部の福澤部長のもと、9人のエンジニア(スタッフ、リーダーなど非管理職)を指導・育成、管理する。

生産本部業務部業務グループ長の大谷純子さんも、ほぼ同時期にシャドウイングに参加した。「女性の管理職の数や比率は少ないと思う」と話す。1998年、中途採用試験を経て、事務職として入社した。当時、女性は事務職の採用が多かった。2001年に女性社員全員を総合職に転換した。大谷さんは、2018年4月からグループ長を務める。業務部長を補佐しつつ、5人の社員の指導・育成や管理に携わる。