組織に異分子を入れていくしか解決の方法はない
2人の女性グループ長の横に座って、話を聞く福澤修部長に話を聞いた。まず、齋原さんが話した「部長たちが1つのコミュニティーになっているように見えた」ことについては、こう説明をした。
「私も課長であった時に、部長の輪の中には入っていけなかった。部長職の今、役員たちの中に入り、議論ができるかと言えばとてもできない。齋原グループ長が感じたことは、それと同じようなことではないだろうか。女性や男性という性別の問題だけではない、と私は思う。職位(役職)の違いによるものも大きいのではないか」
大谷さんが話した「(部長が)勤務時間外も仕事に関わっているように見えた」ことについては「部長側もその課題認識を持ててきてはいる」と説明し、続ける。
「時短トライアルという研修を通じて、各部長は自分の仕事の内容やスケジュールと、育児や介護の両立がいかに難しいかを身を持って知った。研修後、“部門長になれば、さらに家に帰った後も、ずっと仕事について考えないといけない。自分ではとてもできない”と、部門長になることに尻込みする人もいた。性別だけの問題ではないのではないか、と思う」
「お茶当番」については、福澤部長も新入社員の頃、それに近いことをしていたと語る。一方で、こうも説明する。「女性社員のみにお茶当番をさせていたことについて、男性の管理職の間でこれでいいのかと話し合ったことは、私が思い起こす限りではない。その意味では、男性の意識は遅れているのかもしれない」。
これは多くの企業にいえることだが、管理職になるためには、人事評価で一定の結果を残す必要がある。大谷さんは、「(所定労働)時間内で仕事をどのくらいできたか、というところに重きを置いて(会社が個々の社員を)判断をしてほしい。そうでないと、残業をすることができる社員が(結果として)優遇されることになる可能性がある」と話す。つまり、女性社員の中には、家事などがあり、残業をすることが難しい人がいるということだ。
9人の部下を動かす齋原さんは大谷さんの考えに同意しつつも、こう指摘する。
「今は、会社全体を見ると、いかに長い時間働くことができるか、という点で評価していかざるを得ない面はあると思う。たとえば、午後4時に帰る社員にどこまで仕事を任せることができるか。多くの仕事を担当してもらうことは、難しいのかもしれない。私も、必要な時に必要な人が(メカグループに)いてくれると(管理職として)安心感がある。そうでないと、部署が実際のところ、動いていかない。実質的には、残業などもできる社員をある程度は評価していく面はあるように思う。
今後、どうしたらいいのかといえば、私も考えている最中だ。たとえば、部長などが課長や一般職に権限をもっと委譲し、部長に判断を仰がなくとも、進めることができるようにすることも、1つの案ではあると思う。業務のスピードが上がり、残業が減っていくのでないだろうか。
さらにいえば、“男性はこうで、女性はこうである、外国人はこうだ”と無意識のうちに決めつけてしまうこともあるように私たちの意識にはあるように思う。たとえば、子どもがいない女性は、男性と同じように夜遅くまで仕事ができる時間があるとか、あるいは、子どもがいる女性は、このくらいしかできない、など。開発部隊の残業時間はここ1年で半減しているが、現在も課題の1つ。こういう偏見をなくすためにも、男性中心の管理職の中に、女性や外国人というある意味での異分子をたくさん入れていくしか、解決の方法はないように思うことは最近ある」