女性である自分が異分子のように感じた

2人とも、直属上司の部長と行動をともにして多くのことを学んだという。

「部長が多数並び、1つのコミュニティーになっているように見えた。課長であり、女性の私ではなかなか、その輪の中に入れないと感じた」(齋原さん)

生産本部の大谷純子さん

「課長と部長は、様ざまな意味で違うと思った。部長は、他部署などと関わる範囲が想像以上に広いと感じた。仕事が多いので、負荷も大きいように思う」(大谷さん)

齋原さんは、課長と部長の違いをこのように説明する。

「課長は、目の前のグループのことを考える傾向がある。部長はグループのことをはじめ、ほかの部署や役員、グループ全体、お客様など、さまざまなところに注意を払い、調整をする。会う人も多いから、忙しい。それぞれの話し合いで、何らかの意思決定を次々とすることも必要になる」

大谷さんは、部長のポジションがいかに重要であるかをあらためて知る一方、壁のようなものを感じ取ったようだ。

「直属上司の部長に限らず、ほかの部署の部長も含め、勤務時間外も仕事に関わっているように見えた。家に帰ってからも仕事について考えないと、務まらないよう私には思えた。そのようなことを求められるならば、今の私はすぐには難しいのかもしれない。家事などもあり、そこまでの時間をつくることは現時点ではなかなかできない」(大谷さん)

大谷さんは1998年の入社当初は、「管理職になることを具体的に考えたことはあまりなかった」と振り返る。同世代の女性は結婚すると退職するケースが多かったという。当時から、社内は育児休業などの態勢が整備されていたが、休業後に復帰する女性は今よりはやや少なかったようだ。入社当時は、全社的に女性社員が「お茶当番」をしていた。クライアントや取引先などが来社した時に、女性がローテーションでお茶をいれ、出すことになっていた。女性社員たちの提案で、「お茶当番」は廃止となった。そのころに比べると、「はるかに女性にとって働きやすい環境になった」と語る。

しかし、「男性、女性が互いにその違いを認め合うところにまでは、まだなっていないように思う」とも話す。「(社内を広く見ると)女性である私たちが、男性の側に合わせないといけないようになっていると感じることがある」という。ただし、現在の部署(業務部)は女性社員が多く、そのような思いになることはあまりないようだ。

齋原さんは2003年に入社した頃から、同期生や同じ部署の社員のほとんどが男性だったという。昨年、シャドウイングの一環として部長たちの会議に参加した時も、部長の多くは男性だった。その中に少数の女性として参加することに抵抗感はなかったそうだ。

「この13~14年、女性である自分が異分子である、と感じることが何度もあった。この感覚を自分の心から取り除こうとしてきた13~14年だったから、今はもう、抵抗感はない」