ベーシックインカムが導入されないまま、人間より優秀なAIが導入されれば、大量の失業者が生まれ、暴動が起きる。それはまさにイギリスの産業革命の際に起きたことと同じことが起こるのだ。そうならないように最低限の生活を保障するお金を一律に給付しなければならないのだ。

しかし、それでもAIマシンの所有者とそうでないものの貧富の差は広がる。その差は現在の比ではないだろう。

『ホーキング 未来を拓く101の言葉』(桝本誠二著・KADOKAWA刊)

なぜなら、AIの所有者は生産性を高め、物を供給し、対価を受け取るが、所有できないものは、ベーシックインカムをもらいながら、消費をするしかないからだ。ベーシックインカムだけでは当然、左うちわではない。それ以外の収入がなければ、多くの人々が貧困への一途をたどるだろう。その結果、市場は小さくなり、供給側の収益も著しく下がる。

したがって、豊かな資産をもっていた人までもが、貧困に苦しむことになるのだ。人間の深い欲望が、自分を苦しめることになると、ホーキングは危惧している。だからこそ、富の分配を強く訴えていた。

今こそ「没頭できること」を探すべき!

AIが仕事を取って代わる時代に、もう1つ考えなければいけないことがある。それは生きがいだ。現在も仕事に重きを置き、生きがいのほとんどをそれに委ねている人は少なくない。その仕事がなくなるのだ。生きがいの喪失にもつながりかねない。

そこで視点を変えなければならないのだ。

これまで生きがいのため、生活のためにやっていた仕事は、趣味になるだろう。非現実的な夢を目指してもいい。売れない芸人もアーティストもなんとか食っていける。しかし困窮した状況から、逆境に打ち勝つ精神に乏しくなるのではないだろうか。そこから生まれる野心や使命感、それによる生きがいは喪失する。この解決策はもう少し模索しなければならないが、いずれにせよ、今以上に自分自身で生きがいをみつけなければ、充実した人生を送ることは困難になるだろう。

そこでホーキングの言葉から打開策を探ってみよう。ホーキングは「知能は変化に適応する能力だ」と語った。人間は、新たな局面に立たされても、受け入れざる環境の中にいても、知能を持ってすれば、適応できるというのだ。だからAIの時代が来ても、うろたえることはない。