【よしたに】山本さんの言葉は、いわゆる「ビッグマウス」ではないですね。科学者がデータを読むように、本当に事実を淡々と述べているんですね。

【源】Ponanzaの開発を通じて得たことはなんでしょう?

【山本】AIを研究するほど、「人間」のことが学べたことです。たくさんの人と関わりましたから。なので最近は人間を勉強しています。たとえばツイッターで、「将棋星人と地球の存亡をかけて勝負するとしたら、地球代表は、A:羽生善治永世七冠か、B:最先端グリッドコンピュータのどちらにする?」というアンケートをしてみました。

【源】面白いですね! で、結果は……?

【山本】Aの圧勝です(笑)。投票するのは人間ですからね……わかっていましたけど。

【源】理屈より物語を信じたくなっちゃうのはわかりますね。

【山本】AIの話って、暗いんですよね。

【よしたに】ええ!? 山本さんがそれを言いますか。

【山本】今後、AIはどんどん進化して「知性」と呼ばれるものを身に着けるかもしれません。仮に人間と同じように考えるようになったとしましょう。人間って、だいたい自分のことを「いい人だ」と思っていますよね。でも、「別の生き物」にはひどいことをするじゃないですか。AIが人間のことを「別の生き物」だと思わない保証って、ありますかね?

【よしたに】うーん……。

【山本】科学の源泉は「知能」ですけど、人工知能は「知能」を「科学」する学問です。コントロールできない知能はありとあらゆるものを破壊する可能性があります。

【源】SFでよく取り上げられるテーマですね。

【山本】だから、「AI開発はいい人にしてもらいたいね、人間がみんないい人ならAIだっていい人になってくれるかもしれないね」って思っているんです。

敗北を愛する人間が向かう先

山本一成さんの目は、すでに新しいフロンティアに向けられている。(C)よしたに

【源】将棋の次のテーマは何か決まっているんですか?

【山本】はい、次は100倍くらいでっかいことがしたいですね。1人じゃせいぜい2倍までなんで、今度はもっとたくさんの人を巻き込んだ大きな仕事がしたいです。

【よしたに】Ponanzaの100倍って、そうそう見つからなさそうな気が……。

【山本】100倍ってだけなら、いくらでもありますよ。たとえば、大きな仕事をするなら、信用と熱意のある人が必要です。ですから、SNSなどを利用した信用と熱意のスコアリングなんか面白いかもしれません。適切なとき、適切な人を探せる仕組みなんて面白いと思いませんか? 「信用の可視化」というか。そういった、これまで計算不可と思われていた分野でうまく計算できそうなものがあれば、それが僕の新たなフロンティアですね。

【源】具体的には、何か決まっているんですか?

よしたに『新理系の人々 すごいぞ!日本の科学最前線』(KADOKAWA)

【山本】まだ全然なんですよね。自分で自分にがっかりです。講演とかインタビューばっかりで、それはそれで楽しいんですが、楽しいだけじゃダメですよね。非常に不満です。

【よしたに】脚をためる時期なのでは?

【山本】すぐに見つかるに越したことはないじゃないですか。

【源】次の敵がほしいんですね。

【山本】そうです。敗北したい。僕は敗北を愛しているんです。

よしたに
マンガ家
元システムエンジニア。1978年生まれ、長野県出身。著書にコミックエッセイシリーズ『ぼく、オタリーマン。』(全6巻)、『理系の人々』(全6巻/共にKADOKAWA)など。現在、「ダ・ヴィンチニュース」(KADOKAWA)で『理系の人々』、「ガンダムエース」(同)で『ガンダム系の人々』、「グランドジャンプPREMIUM」(集英社)で『いつかモテるかな』を連載中。