「一生勉強」という覚悟を持て

自己投資が必要なのは、若い人々だけではありません。経営者にとっても、大変重要なことです。日本の経営者は、大学で法律や経済を勉強した人が多いのですが、それらの知識は、実際の企業経営や経済運営とはほとんど関係がありません。経営は企業に入ってから、経験を通じて習得するというケースが多いのです。

日本の大学の法文系学部には、これまでは、職業に必要な高度な知識や基礎を教えるという発想がありませんでした。「大学とは真理追究の場であり、実際のビジネスに関係があることを教える場ではない」という観念が強かったのです。しかし、そのために、専門的な経営者が生まれなかったことは、事実です。企業の進むべき方向について、的確な判断力を持っている人が多いとは思えません。現在の日本で最も必要とされることは、経営者の再教育です。

長寿化時代においては、人生に新しいステージが出現します。人間の生物的条件から言えば、引退年齢が70~80歳にならなければなりません。仕事をする期間が長くなり、働き方も画一的ではなくなります。だから、選択肢の幅も広がらなければなりません。

勉強するのは若いときのことであると考えている人が多くいます。しかし、これからは、高齢者の独学が重要な課題になります。高齢者は、それまで得た知識のストックを保有しているわけですから、新しい知識を吸収し、それを解釈し、それを活用することを、若い人よりは容易にできるはずです。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省(現・財務省)入省。72年イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2011年4月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10
(写真=iStock.com)
【関連記事】
大成功を目指すなら学歴より独学を極めろ
橋下徹「偏差値高い系」はなぜ失敗するか
とび職から米名門大へ"ヤンキー式"勉強法
バカほど「それ、意味ありますか」と問う
「子を怒ってばかりの母親」5つの特徴と、結末